JIS Layout Alliance

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日本語配列の“物理的な未来”を残すために

(このページはドラフトです。このアライアンス構想は現在、関係各社・設計者と協議中です。)

キーボード専門メディアGreenkeys運営・編集長 / GreenEchoes Studioという団体代表の河村が、日本語配列キーボードのボトム行を長期的に販売・サポートしやすくするための共通ドラフト案を取りまとめています。

このページについて
・日本語配列キーボードのボトム行を守るためのドラフト提案です。
・メーカー / 代理店 / キーキャップメーカー向けの共有資料です。
・交渉中の段階につき、内容は今後変更される可能性があります。


参加までの流れ

JLA-450/425「参加団体一覧」への掲載は、事前確認のうえでのみ行います。以下の簡易フローに従って進めます。

STEP
申請フォーム送信

参加申請フォームから、ブランド/企業名・担当者・公式URL・希望ステータス・JLAクラス(JLA-450 / JLA-425)・などの必要情報を入力して送信します。

STEP
自動返信

送信直後に、受領メール(日本語/英語併記)が届きます。記載内容に誤りがあれば、返信でお知らせください。

STEP
事務局による内容確認

事務局にて申請内容(ブランド名とJLAクラスの整合、URLの有効性、短文の中立性)を確認します。必要に応じて追加質問を差し上げます。

STEP
掲載完了メール

申請内容に問題がなかった場合、参加団体一覧にカードを追加します。

ただし、掲載許諾がない場合は掲載しません。

カードは 画像+2列表(Brand/Company|Status|JLA Class|Official URL) 構成で、構造化データ(ItemList)にも自動反映されます。

STEP
バッジ掲載

JLA基準に相当する商品ページにバッジを付与してください。

詳細についてはバッジ規約をご覧ださい。

内容の更新や一時取り下げは、メールでいつでも可能です。参加団体一覧への掲載については事前許諾が取れた場合のみ掲載します。

0.はじめに

まず、日本市場で日本語配列メカニカルキーボードを継続的に投入してきた各ブランド、とくに4.5uクラスのスペースバーを搭載した日本語配列モデルを量産・販売し、「日本語配列のメカニカルを市販する」という文化を支えてきたメーカーへ敬意を表します。

そうした実在の製品が日本で流通してきたからこそ、「日本語配列でも交換スペースバーや交換キーキャップを用意できるようにしたい」という話が、いま現実的にできています。

この文書(JIS Layout Allianceドラフト)は、特定メーカーの公式声明でも、強制力のある業界規格でもありません。

日本市場側の視点から「現在すでに売られている日本語配列キーボードのボトム列寸法(例:スペースバー長、スタビライザー支点スパン)を、わかりやすい互換クラスとして整理しよう」という試みです。

この考え方は「これからは新しい仕様に合わせてください」というお願いではありません。

既に存在している実寸をそのまま “互換クラス” として言語化し、将来の交換スペースバーやキーキャップの供給、アフターサポート、再販売を少しでも楽にするためのものです。

ドラフトの基本方針/Basic Draft Policy
  • 各ブランドや代理店に、設計変更やコスト負担、再設計義務を求めるものではありません。
  • 「このクラス(例:4.5u /スタビライザー約70mmスパン・4.25u /スタビライザー約60mmスパン)に近いです」と名乗れるようにすることで、交換用スペースバーやキーキャップを作りやすくするのが目的です。
  • 参加・関与は「レビュー参加(内容確認・意見共有)」という形からで問題ありません。いきなり“正式コミット”や“承認”をお願いするものではありません。
  • ブランド名と具体的な寸法(スペースバー長・スタビライザー支点スパンなど)を結びつけて公開する場合は、必ず当該ブランド側/代理店側の事前確認を行います。合意なしに固定化・公表することはしません。

このドラフトは、日本のユーザーサポートや日本語配列のローカライズ現場の視点から、Greenkeys(運営:河村)が調整窓口として取りまとめています。

Greenkeysは、日本語配列モデルの配列監修やフィードバック提供(国内向けJIS配列レイアウトの相談・検証など)に関わっており、日本語配列を「特殊だから後回し」ではなく「長く売れる/直せる/遊べる」ものとして残す必要があると判断しています。

この文書は、現在の日本語配列ボトム列の“現実”をカタログ化し、今後も交換パーツを供給しやすい環境をつくるためのワーキングドラフト(検討用メモ)です。

ここに書かれた内容は、関係各社・代理店・デザイナーと順次すり合わせながら更新されます。

1. ミッション

要点
・JIS規格(JIS X 6002)はキーの位置・名称は決めているが、物理仕様までは定義していない。
・その結果、日本語配列のボトム行はメーカーごとにバラバラで、互換スペースバーが存在しない。
・JIS Layout Allianceは、JIS配列のスペースバーだけでも共通の物理ベースラインをつくり、日本語配列を「育てられる文化」に戻す狙いがある。

日本語配列を持つキーボードは、日本産業規格(JIS)が制定している標準規格「JIS X 6002 情報処理用けん盤配列」に準拠するキー配列をもつコンピュータ用キーボードです。

しかし、JIS X 6002 が定義しているのは主に「キーとして何がどの位置に存在するべきか」というレイアウト(アルファベット・かな・記号などの文字キーの並びと名称)であり、物理的な仕様までは踏み込んでいません。

たとえば、スペースバーの長さ、ボトム行のキー割り付け、スタビライザーの取り付け位置や寸法、公差といった“ハードウェアとしての形状”は規定されていません。

その結果、日本語配列のボトム行(スペースバー・無変換・変換・かなキー周辺)は全く統一されておらず、メーカーごと/モデルごとに異なる状態が長年続いています。

物理仕様がバラバラなため、交換用スペースバーやキーキャップ、プレート、PCBといったパーツを他社製で代替することがほぼ不可能になっています。

特に問題になるのが「スペースバーの長さ」です。

ANSI配列(英語圏などで一般的な配列)では、スペースバーはおおよそ6.25uという長さが事実上の標準になっており、各社の製品間でキーキャップの乗せ替え・交換文化が成立しています。

ユーザーは自由にスペースバーをカスタマイズ可能で、サードパーティ製の商品でも安心して交換することができます。

これは、キーキャップを設計・販売するメーカー側も同様です。

結果として、キーボードは「買って終わり」ではなく「育てる・遊ぶ」対象になっています。

一方で日本語配列では、スペースバーが4.5uや4.25uといった短い長さになることが多く、その長さ・支え方(スタビライザーの位置)が製品ごとに異なります。

これが原因で、互換スペースバーそのものが市場にほぼ存在しません。

つまり、日本語配列だけが物理的に孤立しているのです。

さらに、日本国内のユーザーは「かな」と「英数」をワンキーで素早く切り替える文化を強く持っており、多くの人は“日本語配列のボトム行(無変換/変換キーなどを含む構成)”がないとそもそも使いにくい、と感じます。

これに加えて、Windowsユーザーであれば、「半角/全角」キーはなくてはならない存在でしょう。

これは海外メーカーにとって参入障壁になっていて、「日本語配列はコストが高いから後回し」という判断を誘発しています。

この状況は、日本語配列を選びたいユーザーにとって不利であり、結果的に「日本語配列は面倒だから採用しない」「日本語配列は限定モデルだけでいい」という設計判断を後押ししてしまっています。

長期的には、日本語配列そのものの生存可能性を下げてしまいます。

JIS Layout Allianceは、この問題に対して「日本語配列のスペースバーだけでも、最低限の共通物理ベースラインをつくろう」という取り組みです。

狙いは“標準化のための標準化”ではなく、“日本語配列をこれからも売れる・作れる・遊べる形で生き残らせる”ことです。

日本語配列を「特殊で扱いにくいもの」ではなく、「ちゃんと手が入れられる、育てられる文化」に戻すことを目的としています。


2. なぜ今やるのか

要点
・ロープロファイル市場は急成長したが、互換性はむしろ崩壊している。
・日本語配列モデルも増えているのに、最下段の寸法の共通基準がない。
・このまま放置すると「日本語配列はコスト高で面倒だから後回し」が固定化し、日本語配列が市場から先細りする。

現在、ロープロファイルキーボード市場は急速に広がっています。

Kailh choc v2、Gateron Low Profile(2.0 / 3.0)など、ロープロファイルキースイッチが各社から出ており、それぞれが独自のスタビライザー構造・プレート設計・PCBカットアウトを採用しています。

結果としてはANSIも含めたロープロファイルメカニカルキーボードにとってかなり難しい状況となっています。

  • “ロープロだから互換性が高い”のではなく、むしろ“ロープロだから互換性がない”
  • メーカーAのスペースバーはメーカーBのスタビライザー位置に合わない
  • 交換用キーキャップやスペアパーツが市場に存在しない

同時に、日本語配列を公式で出すブランドも増加傾向です。

それにも関わらず、日本語配列のボトム行には、業界横断の「これを基準にしよう」という合意がまだありません。

特にスペースバーのサイズでこれは顕著であり、4.5uだったり4.25uだったり、モデルごとにばらばらです。

そのせいで、日本のユーザーは「キーボードを買っても、あとから自分好みにパーツを交換する楽しみ」が育ちにくいと言えます。

メーカー側も「日本語配列はコストのわりにリターンが小さい」と判断しやすくなり、日本語配列の優先度が下がります。

つまり今は、「日本語配列をここで救って共通前提をつくる」のか、それとも「また特殊扱いとして放置する」のか、その分岐点にいると考えます。


3. 提案するベースライン

要点(ドラフト)
・日本語配列スペースバーには、現実的に使われている寸法が大きく2系統あることを明文化します。
 - JLA-450:4.5uのスペースバー長/およそ70mmのスタビライザー支点スパン
 - JLA-425:4.25uのスペースバー長/およそ60mmのスタビライザー支点スパン
・今後新しく日本語配列キーボードを設計・販売する場合は、この「JLA-450」または「JLA-425」のどちらかに合わせることを推奨します。
・これ以上、新しい独自寸法(たとえば中間サイズや独自スパン)を増やさないことを合意したいと考えています。
・スタビライザーの機構や素材など、各社のノウハウそのものは縛りません。共有したいのは“支点がどこにあるか”というインターフェース寸法だけです。

ここからがJIS Layout Allianceのコアです。

まず合意したいのは、日本語配列のボトム行、とくにスペースバー周辺の「物理インターフェース」をどう扱うか、という点です。

これは、各メーカーに「設計を変えてください」とお願いするものではありません。

すでに量産・販売されている日本語配列モデルの実際のボトム列寸法(スペースバー長とスタビライザー支点スパン)を、そのまま“互換クラス”として言語化しようとするものです。

つまり「誰かが新しい規格を上から押しつける」のではなく、「今ある現実の寸法を整理することで、交換用スペースバーやキーキャップを供給しやすくする」ことが目的です。

3.1 スペースバー長クラス

まず、スペースバーの長さを下記のように整理します。

  • 4.5uサイズのスペースバーを日本語配列ボトム行の基本サイズのひとつとして扱います。これをJLA-450クラスと呼びます。
  • 歴史的経緯や既存製品との互換性のために、4.25uサイズのスペースバーも正式なクラスとして扱います。これをJLA-425クラスと呼びます。

「u」はキーボード設計で使われる幅の単位で、1uは標準的な1キー分の幅を表します。
一般的なキーボードでは、隣り合うキー同士のピッチ(中心から中心)は 3/4インチ = 19.05mm で定義されており、この1キー分の幅を「1u」と呼びます。4.5uや4.25uは、その1uの4.5倍/4.25倍の長さを持つスペースバーを指します。

ここで重要なのは「4.5uだけが正解で4.25uは切り捨てる」という話ではないことです。

4.5u(JLA-450)を将来の基準軸に据えつつ、4.25u(JLA-425)も現実的な選択肢として残すという考え方をとります。

これにより、いま市場に存在する日本語配列キーボードを一気に“非互換”扱いにしないようにします。

他にもさまざまなスペースバー長は存在しますが、今後新しく設計・開発される日本語配列キーボード(アライアンスに関与するブランドや代理店のライン)については、基本的にこのJLA-450/JLA-425クラスのいずれかをベースにすることを推奨します。

3.2 スタビライザー支点スパン(横方向の距離)

スペースバー自体の長さと同じくらい重要なのが、「スペースバーの下でそれを支える左右2点の位置関係」です。

具体的には、スペースバー中央のスイッチをはさんで左右にある支点(スタビライザーや補助足など)の中心と中心の間の距離(=スタビライザー支点スパン)が、キーキャップ互換性とプレート/PCB設計に直接効いてきます。

現在、日本語配列では大きく次の2つのスパンが実在しています。

  • JLA-450
    ・スペースバー長:およそ4.5u
    ・スタビライザー支点スパン:約70mm
  • JLA-425
    ・スペースバー長:およそ4.25u
    ・スタビライザー支点スパン:約60mm

JIS Layout Allianceでは、この2つのスパンを公式な「互換クラス」として定義し、新しい日本語配列キーボードは、JLA-450またはJLA-425のどちらかに揃えてほしいと考えています。

これは、各メーカーが自社のレイアウト哲学(4.5uを使いたいのか、4.25uを使いたいのか)を守りつつも、ユーザーが後から交換パーツを入手できるようにするためです。

逆に言えば、JLA-450 / JLA-425 のどちらにも当てはまらない独自スパンをこれからさらに増やしてしまうことは、避けたいと考えています。

そういった“第三の物理仕様”が無制限に増えると、日本語配列ユーザーだけがまた孤立してしまうからです。

この「2クラスを明文化する」という考え方は、キーキャップメーカー・スペースバー単品メーカー・PCB/プレート設計者が、安心して「JIS対応」を名乗れる土台になります。

このクラス分けが重要な理由は下記のとおりです。

  • キーキャップ/スペースバー側は、JLA-450用・JLA-425用の2バリエーションを用意すれば、日本語配列ユーザー向けの交換用スペースバーを現実的に供給できるようになる。
  • PCBやプレートを設計する側は、「JLA-450で行くのか / JLA-425で行くのか」を最初に宣言するだけでよくなり、独自寸法を新しく考案する必要がなくなる。
  • ユーザーは「自分のキーボードはJLA-450系なのか、JLA-425系なのか」だけを把握すれば、後からスペアパーツを探せるようになる。
  • つまり、日本語配列でも“買ったあとにカスタマイズできる”という文化を成立させやすくなる。

JIS Layout Allianceがまず守りたいのは、この「JLA-450 / JLA-425 という共通の物理インターフェース表現」を業界側とユーザー側の両方に用意することです。

3.3 何を求めないか

ここで明確にしたいのは、私たちは各社の内部ノウハウに踏み込むつもりはない、ということです。

  • スタビライザーの機構(ワイヤーの曲げ方、ハウジングの固定方法、潤滑方法、補助ピン形状など)
  • プレートの保持構造や固定クリップ形状
  • ハウジングやワイヤーの素材選定

こういった内容は各ブランド固有のものとして尊重します。公開や統一を要求しません。

JIS Layout Alliance が共有したいのは、あくまでインターフェース寸法(どこに支点があるべきか)だけです。

3.4 現状での課題

現時点では、スタビライザー支点スパンの違いが、日本語配列だけを孤立させています。

下記の図をご覧ください。

このように、4.5uのスペースバーと約4.25uのスペースバーとでは、スタビライザーの間隔(支点スパン)が異なっています。

この事実を前提に、私たちは下記の2クラスを提案します。

JIS Layout Alliance:JLA-450 / JLA-425

JLA-450(4.5u系)

  • スペースバー長:4.5u
  • スタビライザー支点スパン:約70mm
  • スタビライザーワイヤーの長さ(参考):約66.67mm
  • 現行の日本語配列メカニカルキーボードで広く流通している系統

JLA-425 (4.25u系)

  • スペースバー長:4.25u
  • スタビライザー支点スパン:約60mm
  • スタビライザーワイヤー長さ:60mm系スパンに基づく(製品により差異あり/今後ヒアリング)
  • 歴史的に日本語配列キーボードで採用されてきた短いスペースバー系統

3.5 キーキャップ・キーボード・スタビライザーブランドへのお願い(ドラフト)

キーボードブランドへのお願い(ドラフト)

JIS Layout Allianceでは、今後日本語配列の新製品を設計・販売するブランドに対して、次のことを推奨します。

  • 新しく設計する日本語配列モデルは、JLA-450 または JLA-425 のいずれかの仕様に合わせてください。
    (スペースバーの長さとスタビライザー支点スパンの組み合わせを、どちらか一方に揃えるという意味です)
    これは現在、日本国内で流通している日本語配列製品で広く採用されており、将来的なスペースバー/キーキャップの交換性を確保しやすい基準と考えています。
  • 逆に言えば、上記2クラスのどちらにも当てはまらない独自寸法(例:4.4u/支点スパン65mmなど)をこれから新しく増やしてしまうことは、避けたいと考えています。
    これは日本語配列ユーザーを「また別規格」に分断してしまい、互換パーツの供給を難しくする要因になるからです。

キーキャップ/スペースバー製造ブランドへのお願い(ドラフト)

キーキャップやスペースバー単品を作るブランド・工場・デザイナーの方には、次のような協力をお願いしたいと考えています。

  • スペースバーについては、JLA-450用(4.5u / ≒70mmスパン)JLA-425用(4.25u / ≒60mmスパン) の2バリエーションをラインナップすることを推奨します。
    これにより、日本語配列ユーザーが既存のキーボードでも交換用スペースバーを入手できるようになります。
  • ただし、両方のクラスすべてに対応しないと“JLA準拠”を名乗れない、という話ではありません。いずれか一方に対応していれば問題ありません。
  • 日本語配列の交換用キーキャップを購入したいユーザーが「JLA-450対応」「JLA-425対応」「450/425両対応」という表記を見て、自分のキーボードに合うスペースバー/キーセットを選べる状態を目指しています。
  • スタビライザーのハウジング構造や、十字ステムの側壁形状、ワイヤーの固定方法などの内部ノウハウについては、公開や統一を求めません。
    私たちが共有したいのは「スペースバーの長さ」「スタビライザー支点スパン(左右支点の中心間距離)」という“取付け位置の寸法”だけです。

JIS Layout Allianceが目指しているのは、「日本語配列にも交換用スペースバー/キーキャップがちゃんと流通する世界」を作ることです。

キーキャップ側が複数SKUを持ってくれることは、その実現にとって決定的に重要なパートです。

本ドラフトで扱う寸法やブランド名、また「JLA-450 / JLA-425」という呼び方のひも付けは、各ブランド側の了承なしに公開されることはありません。

ページは、あくまで日本語配列キーボード(JISボトム行)を長期的にサポートしやすくするための整理用ドラフトであり、特定メーカーの設計変更や義務を一方的に求めるものではありません。


4. スコープ(やること・やらないこと)

要点
・「スペースバー長(4.5u / 4.25u)」と「スタビライザー支点スパン(約70mm / 約60mm)」をセットにした2つのクラス(JLA-450 / JLA-425)を明文化する。
・新規製品は、そのどちらかに合わせてもらうことで互換性を維持できるようにする。
・各社の機構・素材・実装ノウハウには一切口を出さない。
・最小限の“共通インターフェース”だけをそろえて、文化(土台)を作る。

ここでは、JIS Layout Alliance が「やること」と「やらないこと」を明確化します。

やること

  • 日本語配列ボトム行におけるスペースバー長とスタビライザー支点スパンの組み合わせを、2つのクラス(JLA-450 / JLA-425)として明文化する
    • JLA-450:4.5u/およそ70mmスパン
    • JLA-425:4.25u/およそ60mmスパン
  • 今後新しく設計・販売される日本語配列キーボードは、原則としてJLA-450またはJLA-425のいずれかを採用することを推奨する
    • これ以上、新しい独自サイズ・独自スパンを乱立させないため

やらないこと

  • Kailh choc v2 / Gateron Low Profile 2.0 / 3.0 など、スイッチ世代間の違いそのものは規格化しない。
  • スタビライザーの構造や材料そのものの公開・統一を求めること。
  • ファームウェアやキーマップ(かな/英数切替のロジックなど)も対象外。

この線引きをはっきりさせることで、メーカー側は「自社らしさ」は守りつつ、ユーザーが楽しみやすい土壌を作ることができます。

5. Participants & Outreach / 参加予定者と対話状況

要点

  • これは個人の空想ではなく、すでに複数の関係者と議論が始まっている。
  • 名前や数値は交渉中なので現時点では非公開。
  • 合意が取れたプレイヤーは 創設メンバーとして公開予定。
  • すでに複数社から好意的なリアクションを得ている

現時点では、日本語配列モデルを実際に量産・販売しているブランド、および日本国内の販売代理店と、このドラフト(JLA-450 / JLA-425)の考え方をレビューしてもらっています。

目的は、日本語配列のボトム行を“修理できる/スペアを供給できる”状態で長く残すことです。

あわせて、将来的に交換用のスペースバーやキーキャップを提供できるメーカーにも共有し、どのクラス(JLA-450 / JLA-425)に対応できそうか、という観点でヒアリングを進めています。

特定のキーキャップブランドを優先的に販売する目的はありません。

主語はあくまで「日本語配列キーボード本体の互換性を守ること」「アフターマーケットの活性化」「日本のキーボード市場の規模の拡大」です。

なお、この段階で「関わっている」「話を聞いている」というだけでは、何かに法的・技術的にコミットしたことにはなりません。

現時点でお願いしているのは、あくまでドラフト(案)のレビュー参加と、懸念点・不都合がないかの確認です。

すでに日本語配列を取り扱っている代理店・ブランドにとっては、これは「将来のアフターサポートや交換スペースバー供給を少しやりやすくするための整理」という位置づけです。

再設計の義務やコスト負担、専属契約のような縛りは想定していません。

逆に言えば、この段階からレビューや意見共有に入っていただける企業・代理店は、日本語配列の継続的な扱いやすさ(売りやすさ・直しやすさ)を一緒に守る“初期レビュー参加メンバー”という立て位置になります。

最終的な公開時には、合意がある範囲でのみ、その立場を「Founding participants(創設メンバー)」として紹介する予定です。

この取り組みは、Greenkeys運営者である河村の単独のアイデアではありません。

現在、以下のようなプレイヤーとの個別対話を進めています。

  • 日本語配列キーボードを実際に量産・販売しているグローバルブランド
    (ノーマルプロファイル/ロープロファイル双方で日本語配列を展開するブランドを優先)
  • ロープロファイルスイッチおよびキープロファイル設計に深く関わっている設計者
  • 日本語配列向けのキーキャップ生産やスペースバー供給を検討している国際的なブランド

現時点では、名前や具体的な数値は「交渉中のため非公開」とします。


6. Roadmap / 今後の進め方

要点

  • 段階的に合意を育てる。
  • まず考え方を共有し、次に寸法ドラフトと公差を明文化し、最後に合意したブランドを公開する。
  • これは“縛る規格”ではなく“生きた前提”として扱う。

JIS Layout Allianceは、いきなり完成した仕様を発表するのではなく、段階的にオープン化していきます。

STEP
考え方の共有(Sharing Perspectives)
  • 目的・課題・基本方針(JLA-450とJLA-425という2クラスの両立、スタビライザー支点スパンを明文化し、これ以上新しい独自寸法を増やさない方針)を共有する。
STEP
寸法まわりの整理(Organizing Dimensions)

JLA-450 / JLA-425 それぞれのスタビライザー支点スパン(左右支点の横方向の間隔)およびスペースバー長を、ドラフト値として固定化する。

公差(どの程度までズレOKか)やY方向許容帯(前後方向のズレ幅)の規定についても検討する。

これにより、キーキャップメーカーやプレート/PCB設計者が安心して「JIS対応」「JLA-450対応」「JLA-425対応」と名乗れるようにする。

STEP
合意とラベリング(Agreement and Labeling)

合意いただいた企業・設計者・ブランド名を公開し、日本語配列の物理的な互換性を支える“ラベル”(バッジ)を用意する。

「この製品はJIS Layout Alliance(JLA-450 / JLA-425)に準拠しています」と宣言できる状態にする。

JLA450 425 White
ロゴイメージ

JLAバッジガイドライン▷▷

このロードマップは固定ではありません。

JIS Layout Allianceは、日本語配列の継続的な生存可能性を高めるための「生きた仕様」として扱います。


Q&A / よくある質問

以下は、メーカー・代理店・設計者の方向けによく受ける質問と、その考え方です。

これに「参加する」と公式にこの規格に同意したことになりますか?/Does “participating” in this officially constitute agreement to this standard?

なりません。

現在お願いしているのは、ドラフト内容(寸法クラスや表記のしかた)を共有し、懸念点があれば教えていただく「レビュー参加」です。

「正式に賛成してください」「この寸法で再設計してください」という拘束的なコミットではありません。

勝手に寸法や社名を“標準クラス”として公開されたりしませんか?/Are dimensions and company names being published as “standard class” without permission?

しません。

スペースバー長やスタビライザー支点スパンなどの具体的な数値と、ブランド名/製品名をひも付けて外向けに書く場合は、必ず当該ブランド側・代理店側の事前確認を取ります。

合意なしに「この会社=JLA-450です」「このモデル=JLA-425です」と固定的に公開することはありません。

このアライアンスは、メーカーに設計変更を求める取り組みですか?/Is this alliance an initiative to request design changes from manufacturers?

いいえ。逆です。

目的は「新しい仕様に合わせてください」ではなく、すでに市販されている日本語配列キーボードの実寸(例:4.5u+約70mmスパン、4.25u+約60mmスパン)をそのままJLA-450 / JLA-425というクラス名で整理することにあります。

現行製品を否定せず、その寸法で将来も交換スペースバーやキーキャップを供給しやすくするための“カタログ化”という位置づけです。

このドラフトは誰がまとめていますか? 個人のアイデアですか?/Who is compiling this draft? Is it an individual’s idea?

日本市場側の調整窓口として、Greenkeys(運営:河村)が取りまとめています。

Greenkeysは、日本語配列モデルの監修・ローカライズ支援(国内向けJIS配列の相談やフィードバック提供など)に関わっており、日本語配列を「特殊だから後回し」にせず「長く売れる/直せる/遊べる」形で残すことを目的にこのドラフトを整理しています。

この文書は拘束力のある業界規格ではなく、日本市場向けの“ボトム列寸法の共有メモ(ワーキングドラフト)”という扱いです。

代理店としてはいま何を返せばいいですか? 賛成・反対をはっきり言う必要がありますか?/ As an agency, what should we respond with now? Do we need to clearly state whether we agree or disagree?

現時点では「正式に賛同します/しません」という宣言までは不要です。

もっとも助かるのは、例えば次のようなお返事です:

「方向性には前向きです。今後、寸法やクラス名を具体的に公開する段階では、必ず当社にも事前確認を入れてください。」

これは“拘束のある合意”ではなく、“レビュー参加(内容確認と懸念共有)”として扱われます。

代理店・メーカー側のリスクを抑えつつ、日本語配列のアフターサポートや交換スペースバー供給を一緒に考えるための位置づけです。

4.5u / 4.25u 以外のスタビライザー間隔を使った日本語配列キーボードは、JIS Layout Alliance準拠になりますか?/Do Japanese keyboard layouts using stabilizer spacings other than 4.5u / 4.25u comply with the JIS Layout Alliance?

現時点ではなりません。

JIS Layout Allianceでは、現実に日本市場で流通している日本語配列キーボードのボトム行をもとに、次の2つだけを公式クラスとして扱います。

  • JLA-450:スペースバー長4.5u/スタビライザー支点スパンおよそ70mm
  • JLA-425:スペースバー長4.25u/スタビライザー支点スパンおよそ60mm

これ以外の新しいスタビライザー支点スパン(たとえば4.25uサイズのスペースバーを採用しているがスタビライザー間隔が55mmなど)を今後さらに増やしてしまうと、日本語配列の交換スペースバー・交換キーキャップの互換性がまた分裂してしまいます。

特にロープロファイル領域では独自寸法が乱立しやすいので、今後はこの2クラス以外の新寸法は「JIS Layout Alliance準拠」とはしない方針です。

これは、後方互換性を守りつつ、これ以上バリエーションを増やさないためのルールです。

スペースバーを2つのキーに分割した「分割スペース」は、JIS Layout Allianceの対象になりますか?/Does the “split space” (a spacebar divided into two keys) fall under the JIS Layout Alliance’s scope?

現時点では「対象外」という扱いです。

理由は、分割スペース構成(4.5u相当を2.25u+2.25uや2.0u+2.5uに分ける、4.25u相当を2.0u+2.25uに分ける など)は、ANSI圏でも一般的なキーサイズとスタビライザーで対応できるため、日本語配列だけが孤立した特殊スペースバーを必要とする、という問題そのものを回避しているからです。

JIS Layout Allianceがまず優先して守りたいのは、「一本の短いスペースバー+専用スタビライザー幅」という、日本語配列特有の互換性リスクのあるゾーンです。

分割スペース方式はそのリスクをそもそも回避しているため、“非推奨”ではなく「このアライアンスが救済しようとしている対象とは別枠」という位置づけになります。

将来的には「分割スペースは互換性リスクを自力で解消している代替アプローチとして認める」という注記(equivalent route)を文書化することも検討していますが、まずはJLA-450/JLA-425という2本柱を業界共通言語として固めることを優先しています。

矢印キー(↑を1段上に逃がすか、横一列にそろえるかなど)もアライアンスの対象になりますか?/ Do arrow keys also fall under the Alliance?

現時点では対象外です。

65% / 75%クラスのキーボードでは、多くのメーカーがANSIレイアウト由来の筐体サイズや外装寸法を維持したまま、日本語配列版の基板や配列だけをローカライズしています。

その結果、方向キー周り(↑キーだけ1段上がるか、横に揃えるか、PgUp/PgDnをどこに置くか等)は、筐体デザイン・ブランドの個性・製品コンセプトに強く依存します。

この領域はスペースバーのように「交換パーツ1つで救える」種類の問題ではなく、ケース設計やキー配置のキャラクターそのものです。

JIS Layout Allianceは今の段階では、ここを縛るのではなく、むしろ各ブランドの独自性として尊重します。

私たちがまず守りたいのは、短い1本バー+専用スタビ幅という日本語配列特有のボトム列が、補修不可能にならないことです。

7. Glossary / 用語集

日本語配列の最下段(JIS bottom row)

日本語配列における一番下の段。スペースバー、無変換、変換、かなキーなどが並ぶ領域。

4.5u / 4.25u

キーボード設計で使われるキー幅の単位「u」(1u=標準的な1キーの幅)をもとにしたスペースバーの長さ表現。4.5uは約4.5キー分、4.25uは約4.25キー分の長さのスペースバーを意味する。日本語配列では歴史的に短いスペースバー(4.25u〜4.5u級)が使われることが多い。

スタビライザー(Stabilizer)

スペースバーやShiftなどの長いキーを左右から支えて、がたつきを抑える部品。ワイヤー式、補助足式などメーカーごとに構造が異なる。

スタビライザー支点スパン(Stabilizer span)

スペースバー裏側で左右に配置された支点(スタビライザーの受け、または補助足の接点など)の、中心と中心までの横方向の距離。JIS Layout Allianceは、このスパンを JLA-450 / JLA-425 として明文化し、それ以外をこれ以上増やさないことを目指している。

ロープロファイル(Low profile)

背の低いメカニカルスイッチや、それを前提にしたキーボード全体の設計を指す。代表的なものとしてKailh choc v2やGateron Low Profileシリーズなどがある。一般的なCherry MX規格に対応したキースイッチとは物理仕様が大きく異なり、従来の互換パーツがそのまま使えないことが多い。


最後に

JIS Layout Alliance は、日本語配列のボトム行に関して、各キーボードを製造するブランドとサードパーティキーキャップメーカーが“同じ前提”を共有できるようにするための取り組みです。

それによって、世界の6.25u文化と同じように、日本でも「キーボードを入力デバイス以上の楽しみとして育てる」ことを当たり前にしたいと考えています。

ここで示しているベースライン(JLA-450 / JLA-425を正式に定義し、それぞれのスタビライザー支点スパンを明文化すること、そして今後はこの2クラスのどちらかに揃えて新製品を設計していくこと)は、現在進行中の議論の骨格です。

このページは更新されます。関係各社・設計者との合意が得られ次第、順次具体的な数値・図・公差を追加していきます。

日本語配列が未来に残るように、業界側とユーザー側の両方から支えていきます。

このドキュメントはドラフトです。
本内容は現在、メーカー・設計者・流通パートナーとの協議のために限定共有しているものであり、仕様や表現は今後変更される可能性があります。