2025年冬。
「キーボード工房が完成したので、ぜひ遊びに来てください!」
連絡をくれたのは、一人でキーボード工房を作っていたt-miyajima氏。
彼とはキーボードの修理依頼で知り合い、よくやり取りする仲になりました。
そんな彼が2023年から作っているのが「キーボードを作るための工房」です。
今回、その工房がついに完成したということで、取材に行ってきました。
本記事ではその様子をお伝えします。
自然派キーボード工房「叢花(Murahana)」を訪ねる

新潟から新幹線と在来線を乗り継いで約3時間。

工房の周囲は自然で溢れており、温かくどこか懐かしい景色が広がっていました。






工房の名前は「叢華(むらはな)」。

倉庫の2階を改築したその佇まいは、木の温もりとヴィンテージ感が漂う不思議な空間でした。

倉庫2階フロアは、お手製の「部屋」が作られ、志を同じくする仲間が集える場所になっています。
この日も、工房の完成を祝うために多くの仲間が遠方から集まっていました。

この眼に見える空間すべてが彼の手作り。
「作り方は1から学んだ」と話すt-miyajima氏。
できるだけメインの部分は釘を使わずに組みたいというこだわりがあり、木組み手法を一から学んだと話す。


工房のこだわりは「自然」であること。
そのきっかけは、工房を作る前に体験した「下準備」から着想を得た様子。
元々は資材や廃材置き場だった倉庫は、工房を作るにあたって廃棄しなければいけないものが多く、「捨てにくい人工物」も多々ありました。
この過程を経て、工房と工房で作る作品は「環境に配慮した自然素材」にこだわりをもつようになったとのことでした。

使われている素材の多くは「リユース製品」。
古民家を解体した際の木材やすりガラスの引き戸、ガラス製のシェードなど、「第二の人生」を歩んでいる個性的なものが多くあったのがとても印象的でした。










作りたい「自然派キーボード」とは
工房を作るときの経験を活かして、僕が作るキーボードは「捨てるときにも困らないもの」にしたいですね。
作る前から捨てることを考えるのもおかしな話ですけど。
キーボードのケースが「木材」なら燃やせる、ネジやプレートは鉄製ならリサイクルできるし、配線も銅線を使えば同じように再利用できる。
やっぱり基板には電子部品を使わなくちゃいけないのはある程度は仕方ないですが、やっぱりなるべく環境へ配慮してなるべく基板サイズは小さくしたいですね。
あとは、手作りにこだわりたいです。
キーボードって聞くと、やっぱり「量産品」っていうイメージがあって、どこか冷たい感じがして。
木で作った「手作りのキーボード」って、なんかあったかい感じがするんですよね。
あとは、できる限り自分が作ったものはしっかり直す部分までサポートしたいです。
インタビューより
彼が目指すキーボードのコンセプトは、私たちがイメージする「キーボード」に持つ感覚とは一線を画すものでした。
キーボードに対する一般的なイメージは、「機械的」「壊れたら捨てて買い替える」「プラスチック筐体だからいずれ劣化する」というようなものではないでしょうか。
一方、彼がイメージするキーボードは、「時を経て使い続けられるもの」で、鉋(カンナ)や墨壺、硯(すずり)、茶器、漆器などに通ずる「道具としての機能美と芸術性の融合」が根底にあるものなのかもしれません。
- 機能性の追求: 鉋は木材を整えるために、硯は書道のために、茶器は茶の湯の儀式を支えるために、漆器は保存と美観を両立させるために、それぞれの役割を果たします。木製キーボードは「文字を快適に打つための配慮と工夫」が凝らされるのかもしれない。
- 精神的な豊かさ: こだわりをもって作られれた美しいものは、日常生活に静かな充実感や美的満足をもたらします。手作りの木製キーボードで仕事ができるということは、精神的にも豊かになるかもしれない。
- 永続的な価値: 木製キーボードは、プラスチックとは異なり、人間の寿命よりも長い年月をかけないと朽ち果てません。使い続けることで味わいを産み、永続的な価値をもたらす可能性がある。
キーボードは、安いものであれば1,000円程度でも購入できますし、文字を打つ役割としてはきっと変わらないでしょう。
しかし、そういった観点で言えば、「道具」に関してはすべて「役割を満たせば安くても高くても関係ない」という論理が成り立ちます。
ただ、人間は不思議なもので、同じ役割のものでも別の「価値」を求め、それを所有したり、見たり、使うことに喜びを感じるのです。
彼が作るキーボードは、日本人が忘れかけている「精神的な豊かさ」を提供しうるものになるの可能性を秘めています。

キーボードミートアップ in 叢華
最後に、キーボードミートアップの様子を写真でお伝えします。










Lofree Flowをモチーフにて一体型カラムスタッガードレイアウトを採用した「COLF(コルフ)」と
Alps軸と呼ばれるヴィンテージスイッチを使ったマクロパッド「Alfuer(アルフエル)」(タテカワ・ヨー氏の作品)





その両手からどんなものが生み出されるか

以上、工房叢華をオープンさせたt-miyajima氏についてお伝えしてきました。
彼の構想する「サスティナブルデザイン」のキーボードは、おそらくはまだ日本国内には存在していないのではないでしょうか。
今後、この工房からどんな作品が生まれるのか、楽しみで仕方ありません。
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