JIS Layout Alliance
日本語配列の“物理的な未来”を残すために
(このページはドラフトです。本イニシアチブは現在、関係各社・設計者と協議中です。)
このページについて
・日本語配列キーボードのボトム行を守るためのドラフト提案です。
・メーカー / 代理店 / キーキャップメーカー向けの共有資料です。
・交渉中の段階につき、内容は今後変更される可能性があります。
1. ミッション
要点
・JIS規格(JIS X 6002)はキーの位置・名称は決めているが、物理仕様までは定義していない。
・その結果、日本語配列のボトム行はメーカーごとにバラバラで、互換スペースバーが存在しない。
・JIS Layout Allianceは、JIS配列の最スペースバーだけでも共通の物理ベースラインをつくり、日本語配列を「育てられる文化」に戻す狙いがある。
日本語配列を持つキーボードは、日本産業規格(JIS)が制定している標準規格「JIS X 6002 情報処理用けん盤配列」に準拠するキー配列をもつコンピュータ用キーボードです。
しかし、JIS X 6002 が定義しているのは主に「キーとして何がどの位置に存在するべきか」というレイアウト(アルファベット・かな・記号などの文字キーの並びと名称)であり、物理的な仕様までは踏み込んでいません。
たとえば、スペースバーの長さ、ボトム行のキー割り付け、スタビライザーの取り付け位置や寸法、公差といった“ハードウェアとしての形状”は規定されていません。
その結果、日本語配列のボトム行(スペースバー・無変換・変換・かなキー周辺)は全く統一されておらず、メーカーごと/モデルごとに異なる状態が長年続いています。
物理仕様がバラバラなため、交換用スペースバーやキーキャップ、プレート、PCBといったパーツを他社製で代替することがほぼ不可能になっています。
特に問題になるのが「スペースバーの長さ」です。
ANSI配列(英語圏などで一般的な配列)では、スペースバーはおおよそ6.25uという長さが事実上の標準になっており、各社の製品間でキーキャップの乗せ替え・交換文化が成立しています。
ユーザーは自由にスペースバーをカスタマイズ可能で、サードパーティ製の商品でも安心して交換することができます。
これは、キーキャップを設計・販売するメーカー側も同様です。
結果として、キーボードは「買って終わり」ではなく「育てる・遊ぶ」対象になっています。
一方で日本語配列では、スペースバーが4.5uや4.25uといった短い長さになることが多く、その長さ・支え方(スタビライザーの位置)が製品ごとに異なります。
これが原因で、互換スペースバーそのものが市場にほぼ存在しません。
つまり、日本語配列だけが物理的に孤立しているのです。
さらに、日本国内のユーザーは「かな」と「英数」をワンキーで素早く切り替える文化を強く持っており、多くの人は“日本語配列のボトム行(無変換/変換キーなどを含む構成)”がないとそもそも使いにくい、と感じます。
これに加えて、Windowsユーザーであれば、「半角/全角」キーはなくてはならない存在でしょう。
これは海外メーカーにとって参入障壁になっていて、「日本語配列はコストが高いから後回し」という判断を誘発しています。
この状況は、日本語配列を選びたいユーザーにとって不利であり、結果的に「日本語配列は面倒だから採用しない」「日本語配列は限定モデルだけでいい」という設計判断を後押ししてしまっています。
長期的には、日本語配列そのものの生存可能性を下げてしまいます。
JIS Layout Allianceは、この問題に対して「日本語配列のスペースバーだけでも、最低限の共通物理ベースラインをつくろう」という取り組みです。
狙いは“標準化のための標準化”ではありません。
狙いは、“日本語配列をこれからも売れる・作れる・遊べる形で生き残らせる”ことです。
日本語配列を「特殊で扱いにくいもの」ではなく、「ちゃんと手が入れられる、育てられる文化」に戻すことを目的としています。
2. なぜ今やるのか
要点
・ロープロファイル市場は急成長したが、互換性はむしろ崩壊している。
・日本語配列モデルも増えているのに、最下段の寸法の共通基準がない。
・このまま放置すると「日本語配列はコスト高で面倒だから後回し」が固定化し、日本語配列が市場から先細りする。
現在、ロープロファイルキーボード市場は急速に広がっています。
Kailh choc v2、Gateron Low Profile(2.0 / 3.0世代)など、ロープロファイルキースイッチが各社から出ており、それぞれが独自のスタビライザー構造・プレート設計・PCBカットアウトを採用しています。
結果としてはANSIも含めたロープロファイルメカニカルキーボードにとってかなり難しい状況となっています。
- “ロープロだから互換性が高い”のではなく、むしろ“ロープロだから互換性がない”
- メーカーAのスペースバーはメーカーBのスタビライザー位置に合わない
- 交換用キーキャップやスペアパーツが市場に存在しない
同時に、日本語配列を公式で出すブランドも増加傾向です。
それにも関わらず、日本語配列のボトム行には、業界横断の「これを基準にしよう」という合意がまだありません。
特にスペースバーのサイズでこれは顕著であり、4.5uだったり4.25uだったり、モデルごとにばらばらです。
そのせいで、日本のユーザーは「キーボードを買っても、あとから自分好みにパーツを交換する楽しみ」が育ちにくいと言えます。
メーカー側も「日本語配列はコストのわりにリターンが小さい」と判断しやすくなり、日本語配列の優先度が下がります。
つまり今は、「日本語配列をここで救って共通前提をつくる」のか、それとも「また特殊扱いとして放置する」のか、その分岐点にいると考えます。
3. 提案するベースライン
要点(ドラフト)
・スペースバーは「4.5u」を基準にしつつ、「4.25u」も現実的な許容クラスとして扱う。
・どちらの長さでも、スタビライザー支点スパン(左右の支点の中心間距離)は同じにする。
・スタビライザーの機構や素材など、各社のノウハウそのものは縛らない。
ここからがJIS Layout Allianceのコアです。
まず合意したいのは、日本語配列のボトム行、とくにスペースバー周辺の「物理インターフェース」をどう扱うか、という点です。
3.1 スペースバー長クラス
まず、スペースバーの長さを下記のように整理します。
- 4.5uサイズのスペースバーを日本語配列ボトム列の基本サイズ(ベースライン)として扱います。
- 歴史的経緯や既存製品との互換性のために、4.25uサイズのスペースバーも許容クラスとして扱います。
ここで重要なのは「4.5uだけが正解で4.25uは切り捨てる」という話ではないことです。
4.5uを将来の基準軸に据えつつ、4.25uも現実的な選択肢として残すという考え方をとります。
これにより、いま市場に存在する日本語配列キーボードを一気に“非互換”扱いにしないようにします。
他にもさまざまなスペースバー長は存在しますが、今後新しく設計・開発される日本語配列キーボード(アライアンス参加ブランドによるもの)については、基本的にこの4.5u/4.25uクラスのいずれかをベースにすることを推奨します。
3.2 スタビライザー支点スパン(横方向の距離)
スペースバー自体の長さよりも、さらに重要なのが「スペースバーの下でそれを支える左右2点の位置関係」です。
具体的には、スペースバー中央のスイッチをはさんで左右にある支点(スタビライザーや補助足など)の中心と中心のあいだの距離(=スタビライザー支点スパン)を、共通の値として扱うことを目指します。
- 4.5uスペースバーでも4.25uスペースバーでも、この左右支点スパンは同じにする。
- つまり、メーカーAが4.5uを採用し、メーカーBが4.25uを採用しても、スペースバーを支える“足”の間隔そのものは同じにする。
この共通化が重要な理由は下記の3点です。
- キーキャップメーカー側は、1種類の受け構造(スペースバー裏の取り付け部)を用意すれば、4.5u/4.25uどちら用のスペースバーも展開しやすくなる。
- PCBやプレートを設計する側も、そのスパンだけ共通前提として逃げ穴や固定位置を決められる。
- 交換用スペースバーやキーキャップが市販される土台ができる。
- 日本語配列でも“買ったあとにカスタマイズできる”という文化が成立しやすくなる。
つまり、スタビライザー支点スパンを定義することは、日本語配列の最下段における「物理インターフェース規格」をつくることに相当します。
JIS Layout Allianceがまず守りたいのはここです。
3.3 何を求めないか
ここで明確にしたいのは、私たちは各社の内部ノウハウに踏み込むつもりはない、ということです。
- スタビライザーの機構(ワイヤーの曲げ方、ハウジングの固定方法、潤滑方法、補助ピン形状など)
- プレートの保持構造や固定クリップ形状
- ハウジングやワイヤーの素材選定
こういった内容は各ブランド固有のものとして尊重します。公開や統一を要求しません。
JIS Layout Alliance が共有したいのは、あくまでインターフェース寸法(どこに支点があるべきか)だけです。
4. スコープ(やること・やらないこと)
要点
・「スペースバー長クラス(4.5u/4.25u)」と「スタビライザー支点スパン」だけを合わせにいく。
・各社の機構・素材・実装ノウハウには一切口を出さない。
・最小限の“共通インターフェース”だけをそろえて、文化(土台)を作る。
ここでは、JIS Layout Alliance が「やること」と「やらないこと」を明確化します。
やること
- 日本語配列ボトム列におけるスペースバー長のクラスを定義する
- 4.5uをベースラインとし、4.25uも許容する。
- スペースバー下にある左右の支点(スタビライザー等の受け)の横方向スパンを策定する
- 4.5uと4.25uのどちらでも、このスパンは共通であるべきという方針を示す。
- 将来的には、支点がどの程度「手前側/奥側」にズレてもキーキャップが正しく支えられるかという許容ウィンドウ(Y方向許容帯)も定義する予定。
- これは「前後方向のズレは±どこまでなら同じ互換圏内とみなせるか」という考え方。
やらないこと
- 各社スイッチソケットやスイッチハウジングの設計統一を迫ること
- Kailh choc v2 / Gateron Low Profile 2.0 / 3.0 など、スイッチ世代間の違いそのものは規格化しない。
- スタビライザーの構造や材料そのものの公開・統一を求めること
- プレート素材やPCB配線ルール、その他電気的・実装的な設計ルールの標準化を要求しない。
- ファームウェアやキーマップ(かな/英数切替のロジックなど)も対象外。
この線引きをはっきりさせることで、メーカー側は「自社らしさ」は守りつつ、ユーザーが楽しみやすい土壌を作ることができます。
5. Participants & Outreach / 参加予定者と対話状況
要点
・これは個人の空想ではなく、すでに複数の関係者と議論が始まっている。
・名前や数値は交渉中なので現時点では非公開。
・合意が取れたプレイヤーは Founding participants として公開予定。
この取り組みは、Greenkeys運営者である河村の単独のアイデアではありません。
現在、以下のようなプレイヤーとの個別対話を進めています。
- 日本語配列キーボードを実際に量産・販売しているグローバルブランド
(ノーマルプロファイル/ロープロファイル双方でJ日本語配列を展開するブランドを優先) - ロープロファイルスイッチおよびキープロファイル設計に深く関わっている設計者
- 日本語配列向けのキーキャップ生産やスペースバー供給を検討している国際的なブランド
現時点では、名前や具体的な数値は「交渉中のため非公開」とします。
正式に同意を得られたプレイヤーについては、Founding participants(創設メンバー)として順次公開予定です。
6. Roadmap / 今後の進め方
要点
・今すぐすべての寸法をロックするのではなく、段階的に合意を育てる。
・まず考え方を共有し、次に寸法ドラフトと公差を明文化し、最後に合意したブランドを公開する。
・これは“縛る規格”ではなく“生きた前提”として扱う。
JIS Layout Allianceは、いきなり完成した仕様を発表するのではなく、段階的にオープン化していきます。
- 目的・課題・基本方針(4.5uをベースとしつつ4.25uも許容、スタビライザー支点スパンの共通化)を明文化する。
スタビライザー支点スパン(左右支点の横方向の間隔)を共通ベースラインとして定義する。
公差(どの程度までズレOKか)やY方向許容帯(前後方向のズレ幅)も文章化する。
これにより、キーキャップメーカーやプレート/PCB設計者が安心して「JIS対応」を名乗れるようにする。
合意いただいた企業・設計者・ブランド名を公開し、日本語配列の物理的な互換性を支える“ラベル”(バッジ)を用意する。
「この製品はJIS Layout Allianceに準拠しています」と宣言できる状態にする。
このロードマップは固定ではありません。
JIS Layout Allianceは、JIS配列の継続的な生存可能性を高めるための「生きた仕様」として扱います。
7. Glossary / 用語集
日本語配列の最下段(JIS bottom row)
日本語JIS配列における一番下の段。スペースバー、無変換、変換、かなキーなどが並ぶ領域。
4.5u / 4.25u
キーボード設計で使われるキー幅の単位「u」(1u=標準的な1キーの幅)をもとにしたスペースバーの長さ表現。4.5uは約4.5キー分、4.25uは約4.25キー分の長さのスペースバーを意味する。JIS配列では歴史的に短いスペースバー(4.25u〜4.5u級)が使われることが多い。
スタビライザー(Stabilizer)
スペースバーやShiftなどの長いキーを左右から支えて、がたつきを抑える部品。ワイヤー式、補助足式などメーカーごとに構造が異なる。
スタビライザー支点スパン(Stabilizer span)
スペースバー裏側で左右に配置された支点(スタビライザーの受け、または補助足の接点など)の、中心と中心までの横方向の距離。JIS Layout Allianceは、このスパンを共通化することを最重要ポイントと考えている。
ロープロファイル(Low profile)
背の低いメカニカルスイッチや、それを前提にしたキーボード全体の設計を指す。代表的なものとしてKailh choc v2やGateron Low Profileシリーズなどがある。一般的なCherry MX規格に対応したキースイッチとは物理仕様が大きく異なり、従来の互換パーツがそのまま使えないことが多い。
最後に
JIS Layout Alliance は、日本語JIS配列のボトム列に関して、各ブランドとサードパーティキーキャップメーカーが“同じ前提”を共有できるようにするための取り組みです。
それによって、世界の6.25u文化と同じように、日本でも「キーボードを入力デバイス以上の楽しみとして育てる」ことを当たり前にしたいと考えています。
ここで示しているベースライン(4.5uを基準、4.25uも許容/スタビライザー支点スパンの共通化)は、いま進行中の議論の骨格です。
このページは更新されます。関係各社・設計者との合意が得られ次第、順次具体的な数値・図・公差を追加していきます。
JIS配列がちゃんと未来に残るように、業界側とユーザー側の両方から支えていきます。
このドキュメントはドラフトです。
本内容は現在、メーカー・設計者・流通パートナーとの協議のために限定共有しているものであり、仕様や表現は今後変更される可能性があります。
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