「分割キーボード」というワードを聞いたことがある人はそんなに多くないのではないでしょうか。
世の中は広いもので、実は通常のキーボードを左右に分割したものが存在します。
これまではいわゆる「自作キーボード」と呼ばれる個人設計(7sPro by サリチル酸氏)のものが代表的でしたが、最近では市販型のものも登場してきています。
そんな中で「安価で完成度が高い」分割キーボードがこの「Epomaker Split65」です。
本気記事では、Split65の魅力についてレビューしていきます。

- 市販型65%分割でキーマップ変更対応は唯一無二の存在
- タイピングの自由度が高い
- 分割キーボードでこの仕様としては安価
- 見た目がシックで使いやすい
- かなり自由にMOD-TAPが設定できる
- オフィスで利用するにはキースイッチの交換が必要
- キーマップの変更には一工夫が必要
- VIAのキーマップ変更画面はやや難あり
- タッチタイピングでは少し工夫が必要
- キーキャップの交換用選択肢が若干制限される可能性あり
- ティルトアングルの調整ができない
- MODキーのキーキャップがWindowsとMacが混在している
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分割キーボードの代表機
通常配列(ロウスタッガードレイアウト)の分割キーボードで有名なのは下記の7つです。
有名な分割キーボード
- Keychron Q11-75% ANSI
- FILCO Majestouch Xacro M10SP-75% JIS/ANSI
- BAROCCO MD770-75% JIS/ANSI
- BAROCCO MD600-65% ANSI Alice/JIS
- Matias Programmable Ergo Pro for Mac-75% ANSI
- Kinesis Freestyle2 KB800PB-US-75% ANSI
- Perixx PERIBOARD-624B US-75% ANSI
やはり、かなりのニッチジャンルということで、選択肢がかなり限られてきます。
その中でも、今回紹介する65%のコンパクトレイアウトで左右分割の市販型キーボードは、Epomaker Split65を含め2機種しかありません。

Mistel BAROCCO MD600も非常によい選択肢ですが、キーマップ変更の自由度がちょっと低いです。
その点、Epomaker Split65に関しては、QMK/VIAに対応しているため、かなり自由にキーマップの変更ができます。
やはり、「キーマップの変更ができる」という点では、Split65は唯一無二の選択と言えるでしょう。
Epomakert Split65の概要

スペック詳細
- 配列:英語配列
- キー数:66キー(65%レイアウト)
- マウント方法:ガスケットマウント(4層の吸音材を搭載)
- 南向きLED搭載
- ホットスワップ対応
- トリプルモード対応(USB Type-C/BT5.0/2.4GHz)
- キースイッチ:Epomaker Wisteria Linear/Flamingo
- バッテリー:3000mAh
- 重さ:約0.8kg
- ティルトアングル:約7度
- ケース素材:トップケースーABS ボトムケースーアイアン
- プレート:ポリカーボネート
- キーキャップ:Cherry Profile-PBT昇華印刷
- レイテンシー:
- 有線接続-1000Hz/3ms
- 2.4GHz-1000Hz/5ms
- BT-125Hz/15ms
- キーマップ変更ソフト:VIA(jsonファイルはこちら▷▷)
- 販売価格:18,600円(税込)

【写真でみる】Epomakert Split65の概要
それでは早速、Epomaker Split65についてみていきましょう。
こんな感じの爽やかなパッケージングです。

パッケージにも技適マークがありますので、日本国内でも安心して無線接続を利用することができますね。

箱を開けると、上部の箱にアクセサリー類が入っており、その下にキーボードが入っている形です。

内容物は、本体(左右1対)、取り扱い説明書、キーキャップ&キースイッチプラー、左右接続ケーブル(Type C-to-C)、USBケーブル(Type C to A)、予備スイッチ(Epomaker Wisteria Linear V1×3)、USBドングルです。

左右接続用のType C-to-Cケーブルの長さは約35cmで、両端はL字コネクタとなっています。

早速、キーボード本体をみていきましょう。
まず、キーキャップのグラデーションの美しさが際立ちますね。

最上段は白ではなく、グレーホワイトという感じです。
そこから再下段に遷移するに連れて、ネイビーへとグラデーションしています。

キーレイアウトとしては、右側の方が長いですね。
右上にはロータリーエンコーダーを搭載しています。

中央の分割部分の境目はこのような感じになっています。
日本で一般的な「タッチタイピング」のやり方に則ると、「6」は右手のタイピングロールとなっているはずですが、なぜか左側にあります。

Keychronも同様に「6」は左側にありました。
この他にも、市販キーボードの多くが「6」は左側にあります。
海外と日本ではちょっとタッチタイピングロールが異なるのでしょうか?

分割面の断面もみていきましょう。
このように、断面に沿って綺麗にケースとして整形されており、ピッタリとくっつけて使用することができます。



やはり最初から「分割」というのは慣れないためタイピングしにくい可能性があります。
そういった点では、一体型として利用できるのはとても良いですね。

キーボード前面の高さは約20mmと一般的な高さです。
快適にタイピングするためにはパームレストがあった方がいいかもしれません。

スイッチおよび接続端子は背面に集中しています。
左右接続端子穴はそれぞれのキーボードの中央部分に配置されており、有線接続用の端子はキーボード左側の端に位置しています。

Type-C端子の脇には、3wayスライドスイッチがあり、中央が有線、左が2.4GHz、右がBT接続と切り替えができます。

トップケースはABS樹脂製ですね。

裏面をみていきましょう。
裏面はトップケースにピッタリとハマる形で、金属製のプレートが嵌め込まれています。

素材は「Iron(鉄)」と書いてあったため、黒くコーティングされた薄い鉄板のような印象です。
ティルトレッグ等はありません。

側面から見るとケース形状としてティルトアングルがついていることがわかります。

ティルトアングルは実測で約7.3度となっており、一般的なキーボードのティルトアングルと同等(6度ー7度程度)です。

キースイッチはEpomaker Wisteria Linear v1を搭載しています。

スイッチプレートはPC(ポリカーボネート)を採用しています。

打鍵感に関しては、ガスケットマウントとポリカーボネートプレートの効果もあって比較的柔らかめです。
打鍵音に関しては、底打ち音に特徴のあるWisteria Linearと、トップケース内の反響もあり、比較的ピーキーな「カチカチ」したサウンドが楽しめます。
キーキャップはPBT素材を用いた昇華印刷です。
印刷精度は高く、にじみ等はみられませんでした。




キーキャップ内壁は厚く、十字ステムの成型精度も良好です。



全キースイッチに南向きLEDを搭載しており、おしゃれなライティングを楽しむことができます。

ただし、キーキャップ自体はLEDを透過しないPBT素材となっているため、派手なライティングというよりは「上品に光る」ようなイメージですね。

落ち着いた色合いのルックスは、どんなデスクセットアップにもマッチするでしょう。


Epomaker Split65のメリット
私が実際に使って感じたEpomaker Split65のメリットは下記の3点です。
- 市販型65%分割でキーマップ変更対応は唯一無二の存在
- 分割キーボードでこの仕様としては安価
- 見た目がシックで使いやすい
- かなり自由にMOD-TAPが設定できる
市販型65%分割でキーマップ変更対応は唯一無二の存在

Split65のもっとも大きなメリットは「コンパクトで且つ組み立てが不要な分割キーボードはこれしかない」ということでしょう。
やはり、キーボードが好きな方が比較的よく使うのがファンクションキーがないコンパクトサイズの65%レイアウトです。
「市販品」というジャンルで、この仕様で販売しているのはEpomakerとMistelくらいしかありません。
ここに「自分自身で自由にキーマップを変更できる」という条件が加わると、執筆時点ではSplit65しか存在しないのです。


やはり、VIAで自由にキーマップが変更できるのは便利です。
加えて、有線接続だけでなく、無線接続にも対応しています。
Split65は、まさに「マニアが求めている逸品」に仕上がっていると言えるでしょう。
タイピングの自由度が高い
Split65は、分割キーボードですが、一体型としても利用可能です。
よって、分離していることがデメリットになることはなく、むしろ「一体型としても分離型としても利用できる」というメリットになっています。



左右に分かれているから慣れないとタイピングがしにくいというのは事実です。
しかし、このように「一体型」としても利用できるのであれば、そこまで「分離できる」ことに不安を感じなくて済むのは大きなメリットと言えます。
分割キーボードでこの仕様としては安価
分割キーボードでQMK/VIAに対応してキーマップ変更に対応したライバル機としては、Keychron Q11が挙げられます。
フルアルミニウム製ボディを採用、ガスケットマウント非採用、75%ANSIレイアウトなど仕様は異なりますが、日本で入手できる比較対象として挙げられる分割キーボードはこのくらいしかありません。
このKeychron Q11が42,900円(税込)に対して、Epomaker Split65は18,600円(税込)と約半額で購入することができます。
コストパフォーマンスの高さもSplit65のメリットと言えるでしょう。
見た目がシックで使いやすい

Split65は黒を基調としたカラーリングとなっているため、どんなデスクでも使いやすいです。
かなり自由にMOD-TAPが設定できる
近年のキーボードには珍しく、MOD-TAPを用いたキーマップのフルカスタマイズが可能です。
例えば、長押しした時はレイヤー2へ移動、短押しした時はバックスペースキーとして利用できるようにするには、Anyキーという設定を用いて、「LT(2,KC_BSPC」と設定すると、その挙動を実現することができます。

また、ショートカットキーとして、「コピー(C(KC_C)」などもワンボタンアクションに設定することも可能です。
代表的なショートカットキー
ショートカットキー | WIN | Mac |
---|---|---|
コピー | C(KC_C) | G(KC_C) |
貼り付け | C(KC_V) | G(KC_V) |
切り取り | C(KC_X) | G(KC_X) |
元に戻す | C(KC_Z) | G(KC_Z) |
範囲スクリーンショット | LSG(KC_S) | LSG(KC_4) |

私は普段は30%から40%サイズのキーボードを使っていますが、その省スペースタイピング環境が再現できます。
また、横にキー数が多いため、40%サイズよりもゆったりとタイピングできる点は非常に気に入っています。
MODTAPの組み合わせについては下記のシミュレーターをご利用ください。

カスタム設定を行う際は、必ず元々のキーマップのバックアップを取りましょう。
一応、元々のキーマップファイルも置いておきます。
筆者のカスタムキーマップはこちら▷▷
Epomaker Split65のデメリット
私が感じた、Split65を購入する前に確認したい注意点は下記の7つです。
- オフィスで利用するにはキースイッチの交換が必要
- キーマップの変更には一工夫が必要
- VIAのキーマップ変更画面はやや難あり
- タッチタイピングでは少し工夫が必要
- キーキャップの交換用選択肢が若干制限される可能性あり
- ティルトアングルの調整ができない
- Mac用のキーキャップが付属していない
順番にみていきましょう。
オフィスで利用するにはキースイッチの交換が必要
Split65の打鍵音は、決して小さくはありません。
打鍵音のチューニング的に「タイピング音を楽しむ方向」に調整されているため、むしろ打鍵音は大きい方だと思います。
打鍵音を聞いてみましょう。
よって、そのままのキースイッチではオフィス等のタイピング音を気にすべき場所で利用することはできません。

普段、オフィスで使っているキーボードと比較すると、比べ物にならないくらい打鍵音は大きいです。
オフィスで使いたい場合は、別途「静音スイッチ」を購入し、自分で交換する必要があります。
キーマップの変更には一工夫が必要
Split65は「VIA」というウェブアプリを用いてキーマップの変更を行います。
このVIAという仕組みの仕様上仕方がない側面もありますが、対象キーボードがデータベースに登録されないと「json」というそのキーボード専用のデータファイルを読み込ませる必要があるのです。

VIAに関しては、データベース登録までが非常に遅いため、執筆時点でもSplit65は登録されていません。
また、日本版Epomakerの販売サイトには専用のjsonファイルの配布リンクがないため、下記から別途ダウンロードが必要な点も注意が必要でしょう。
https://epomaker.com/blogs/via-json/epomaker-split65-via-json-file
VIAのキーマップ変更画面はやや難あり

使用上の問題はありませんが、VIA上で表示されるキーマップが、実際のキー配列とは若干異なっている点は注意しましょう。
右下のキーレイアウトのアローキーの形状が異なっています。

ソフトウェア部分ではちょっと惜しい感じですね。
タッチタイピングでは少し工夫が必要

先述したように、日本で主流となっているタッチタイピングでは、「6」は右手でタイピングすることとなっています。
しかし、Split65は左右に分割されていてかつ、「6」が左側にあるため、タッチタイピングで慣れている方は少々戸惑う可能性がありそうです。
キーキャップの交換用選択肢が若干制限される可能性あり
Split65のスペースバーのサイズは左右均等でそれぞれ「3.0u」というサイズになっています。
一般的な交換用キーキャップセットのスペースバーに関しては、主にアリスレイアウトで採用される「2.25u」「2.75u」が同梱されていることが多いのですが、3.0uサイズが同梱されているキーキャップセットはほとんどありません。
よって、キーキャップを交換したい場合、スペースバーのみ交換できない可能性があります。

スペースバーのサイズに関しては、やはりAliceと同様のサイズを採用して欲しかったですね。
ティルトアングルの調整ができない
Split65には、可変式ティルトレッグが登載されていないため、デフォルトのティルトアングルから変更ができません。
ただし、約7度というのは一般的なキーボードと同じ角度となっていため、これ以上高くする必要がないため、それほど気にする必要はないでしょう。
MODキーのキーキャップがWindowsとMacが混在している


どうしてこういった仕様になっているか不明ですが、なぜか左側の最下段キーはWindowsのMODキー(Win /Alt)となっていますが、右側のキーはMacのMODキー(⌥/⌘)となっています。
加えて、交換用のキーキャップが付属していないので、どっちつかずになってしまっているのが気になりました。
まとめ|完璧ではないが65%分割キーボードとしては有効な選択肢

以上、65%左右分割型キーボード「Split65」についてレビューしてきました。
交換用キーキャップの選択肢が少ないことや、再下段のMODキーのちぐはぐさなど、気になる点はあるものの、「65%左右分割型」という部分においては唯一無二の魅力的なキーボードと言えるでしょう。
特に、65%以下のサイズにチャレンジしたい方には非常に有効な選択肢になるのではないでしょうか。

あくまでも主観的な意見にはなりますが、腕を開いてタイピングできるので肩周りの窮屈な感じが少なくなりました。
Split65、ぜひ試してみてください!
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