ワイヤレスなのにドングルが増える?エレコムBridge Eから考えるUSBレシーバーの「高性能化」と「共通化」

  • URLをコピーしました!
コラム
この記事の位置づけ
本記事は、キーボード市場や製品動向についての筆者見解を含むコラム記事です。事実関係の確認に努めつつ、分析や評価には筆者の視点が含まれます。レビューやニュースとは異なる、意見性のあるコンテンツとしてご覧ください。

なぜ、ドングルなしで無線接続できる周辺機器を、わざわざ独自ドングルでまとめるのでしょうか。

このコラムは、そんな問いから始めたいと思います。


エレコムから、ひとつのUSBレシーバーに最大7台のマウスやキーボードを接続できる「ELECOM Bridge E USBレシーバー」が発売されました。

これは便利そうですね。

ただ、不思議なことがあります。

そもそも、Bluetoothを使えば、マウスやキーボードはもともとUSBレシーバーなしで接続できるはず。

それにもかかわらず、なぜエレコムは新たに共通レシーバーを開発したのでしょうか。

一方、ゲーミングデバイスでは、無線で1,000Hz、4,000Hz、8,000Hzに対応する高性能な専用レシーバーが増えています。

ケーブルは減ったはずなのに、パソコンへ挿すドングルはむしろ増えている。

Bridge Eの登場をきっかけに、今、マウスやキーボードの無線接続で何が起きているのか。

ちょっと触れていきましょう。

Table of Contents

Bridge Eから生まれた疑問

まずは、今回の起点となったBridge Eの仕様と、Bluetoothがあるにもかかわらず専用レシーバーを用意する理由を整理していきましょう。

なぜ、ドングルなしで無線接続ができるのに、わざわざ専用レシーバーを開発したのでしょうか。

最大7台をまとめる「Bridge E」

m er10gy z1

エレコムが2026年8月上旬に発売したBridge Eは、対応するマウス、トラックボール、キーボードをひとつのUSBレシーバーへ登録できる仕組みです。

最大接続数は7台。

レシーバーをパソコンへ挿したまま、複数の入力機器を使い分けられます。

レシーバーを紛失した場合の交換用として利用できることも、従来の製品ごとに固定されたレシーバーとの違いです。

Kawamura top RKawamura

おそらくは、今後のエレコム製品にはドングルは同梱せず、別売りになりそうな気がしています。
ドングル一つで複数機器を接続できるのであれば、ドングルは一つしか要らなくなるためです。

通信にはBLE(Bluetooth Low Energy)ベースのプロトコルを採用。

エレコムは、オフィス利用を想定した混信対策と、Security Mode 1/Level 4によるセキュリティを特徴として挙げています。

一方、レポートレートは最大133Hzです。

ゲーミングマウスで一般的な1,000Hzには届きません。

Bridge Eは応答性能よりも、接続台数、省電力、セキュリティ、オフィス内での安定性を重視した共通レシーバーといえます。

Bluetoothがあるのに、なぜ専用レシーバーを使うのか

M ER10GY 01

パソコンにBluetoothが搭載されていれば、メーカーの異なる複数のマウスやキーボードを同時に接続できます。

USBポートの節約だけが目的なら、共通レシーバーを新たに作る必要はありません。

なぜなら、いつもと同じように無線接続にはBluetoothを用いて接続すれば良いからです。

それでも専用レシーバーを使う理由は、Bluetoothでは接続できないからではなく、メーカーが通信経路を管理しやすくなるからだと考えられます。

Kawamura top RKawamura

この一文だけ見ると、主語は企業側の利便性にあるようにも思えますが、結果としてユーザーの利便性も同時に両立しています。

一般的なBluetooth接続は、パソコン側のBluetoothチップ、アンテナ、OS、ドライバー、省電力設定などの影響を受けます。

よって、同じマウスでも、接続するパソコンによって挙動が変わる可能性があるのです。

Bluetooth環境で接続不具合が出やすいのは、こうした接続先側の設定の制御が難しいためだと考えらえます。

一方で、専用レシーバーを用いれば、入力機器からUSBまでの無線チップ、通信方式、ペアリング、ファームウェアをメーカー側でまとめて設計できます。

加えて、パソコンからは一般的なUSB入力機器として認識されるため、Bluetoothを搭載していないパソコンや、Bluetoothの利用が制限された環境でも導入しやすくなるというメリットもあります。

特に法人では、数十台、数百台のパソコンを一挙に取り扱うため、接続不具合対応を一台ずつ行っていては、社内SEの手がいくらあっても足りません。

それをBridge Eであればイレギュラーが極めて少なくなるため、こうした対応の手間も省ける可能性があります。

Kawamura top RKawamura

Bridge Eが「オフィスでの使用に特化」と説明しているのは、このためでしょう。

なお、BLEはBluetoothと別の技術ではありません。

Bluetooth Low Energyの略で、低消費電力での通信に適したBluetooth規格のひとつです。

参考:Bluetooth とは何か?第2回 [全3回]|東芝情報システム株式会社

ただし、Bridge Eはパソコン内蔵Bluetoothへ直接接続するレシーバーではありません。

BLEを対応機器と専用レシーバー間の通信基盤として使い、パソコン側ではUSB入力機器として動作します。

つまりBridge Eは、Bluetoothの汎用性を利用するのではなく、BLEを使った接続環境をエレコム側で管理する仕組みと言えそうです。

他社の先行事例

Bridge Eの技術よりも先行して、ロジクールが発表した「Logi Bolt」という仕組みがあります。

実は、国外に拠点を持つ大手オフィス機器企業が先行して発表していました。

「エレコム版Logi Bolt」という後追い感はある

ロジクールは以前から、最大6台の対応機器をひとつのレシーバーへまとめる「Unifying」を展開してきました。

これを利用してトラックボールマウスなどを利用してきた方も多いことでしょう。

筆者もその一人です。

そのロジクールは、2021年には、BLEを基盤として安全性と安定性を高めた「Logi Bolt USBレシーバー」のコンシューマー向け販売を日本国内で始めています。

ELECOM Bridge ELogi Bolt
最大登録数7台6台
通信基盤BLEベースBLE
マウスのレポートレート最大133Hzおおむね125Hz
追加登録エレコム マウスアシスタントLogi Options+

同じ技術を用いているという部分で、Bridge Eも表面上は非常に類似しており、「エレコム版Logi Bolt」といった後追い感があるのも事実でしょう。

一方、国内主要ブランドを見ると、対応製品をあとから「専用レシーバーでまとめる」といった技術は見られません。

Greenkeysで主要国内ブランドの現行製品を確認した範囲では、対応するマウス、トラックボール、キーボードを横断する共通レシーバー基盤へ踏み込んだ国内ブランドは、現時点でエレコムのみとみられます。

世界的には後発でも、国内周辺機器市場では先行しています。

Bridge Eの注目点は仕組み自体の新しさより、幅広い入力機器を持つエレコムが共通基盤の構築へ動いたことにあると見ています。

これは、エンドユーザー目線ではなく、ビジネス目線から見ても非常に的を得た戦略的な動きだと評価しています。

Bridge Eをビジネス面から見る

国内企業としては先行しているBridge Eの取り組み。

Bridge Eは従来のパソコン内蔵型のBluetoothとは異なり、接続に関する事項を自社でコントロールできるようにした結果、エンドユーザーの利便性やそれを管理する企業側にとって明確な利点があることがわかりました。

実はこの取り組みは、ビジネス面で見ても非常に合理的です。

Bridge Eはユーザーにとって便利ですが、エレコム側にも明確なビジネス上の利点があります。

一度Bridge E対応製品を購入すると、次のマウスやキーボードも「いま使っているレシーバーへ追加できる」という理由で、エレコム製品から選びやすくなります。

これは、いわゆるロックイン、あるいはブランド内への囲い込みにつながります。

ただし、ユーザーを一方的に閉じ込める仕組みではありません。

USBレシーバーを増やさず、ペアリング方法や設定ソフトを統一できるという実際のメリットがあるからこそ、同じブランドを選ぶ理由が生まれます。

エレコム製品を選ぶと「エレコムのレシーバーしか使えない」といったマイナスの側面ではなく、「エレコム製品を選べば接続も簡単だしレシーバーも一つで済む」というプラスの側面から、ユーザーに選ばれるような仕組みとなっているという点で、ユーザーの利便性とメーカーのエコシステム戦略が、同じ方向を向いていると言えるでしょう。

「囲い込み」というと非常に聞こえが悪いですが、「選ばれる仕組みを作っている」という点で、双方にとってメリットがある魅せ方をしている点は「うまい」と感じました。

現時点での対応機器はまだまだ少ないですが、今後対応製品が増えることで、ユーザー自身がエレコム製品を「選ぶ」ことにつながるような基盤を構築しているのがこの「Bridge E」なのではないでしょうか。

USBレシーバー市場で起きていること

共通レシーバーの動きから視野を広げると、現在の無線入力機器では「共通化」と「高性能化」が同時に進んでいます。

無線ドングルは「共通化」と「高性能化」へ

Bridge EやLogi Boltが多くの機器をまとめる一方、ゲーミング向け無線は逆方向へ進んでいます。

ゲーミングシーンでは、多くつながることよりも「速く伝達すること」に主眼が置かれます。

キーを叩いたリアクションの伝わる速度が速い、つまり遅延時間(レイテンシー)が短いほど、有用なパフォーマンスが発揮できると言われていまうす。

現在では、独自2.4GHz通信によって1,000Hzに対応するワイヤレスマウスやキーボードは珍しくありません。

さらにRazerやROGなどからは、4,000Hz/8,000Hz対応の無線レシーバーも登場しています。

その中間にあるのが、Razer HyperSpeed Multi-Device、ROG Omni Receiver、Corsair SLIPSTREAM Multipointなどです。

接続数を2~3台に絞り、マウスとキーボードをひとつのレシーバーへまとめながら約1,000Hzを維持します。

現在のUSBレシーバーは、おおむね次の三段階に分かれています。

方向接続台数ポーリングレート製品例
オフィス共通型6~8台125~133Hz前後Bridge E、Logi Bolt
ゲーミング共通型2~3台約1,000HzBridge G1000、HyperSpeed、Omni、SLIPSTREAM
競技性能型原則1台4,000~8,000HzRazer HyperPolling、ROG 8K

接続台数を取るのか、応答性能を取るのか。

同じUSBレシーバーでも、目指している価値は異なります。

エレコム自身も133Hzと1,000Hzを使い分けている

先にも触れましたが、エレコムがリリースしているBridge Eとは別に「Bridge G1000」という別のUSBレシーバーが存在します。

これはBridge Eとは異なる思想を持っており、同時接続台数を増やすのではなく、ポーリングレートの高さに重心を置いた商品です。

Bridge EBridge G1000
最大接続数7台3台
最大レポートレート133Hz1,000Hz
主用途オフィス高性能・ゲーミング
重視する価値台数・安定性・安全性応答性・トラッキング

Bridge G1000は、ゲーミングセンサーとハイグレードMCUを組み合わせ、最大1,000Hzに対応します。

一方のBridge Eは、ポーリングレートを最大133Hzとする代わりに、最大7台まで登録できます。

この二つのUSBレシーバーは明確に性格が異なります。

ゲーミングシーンで活用するのであればBridge G1000が第一選択肢となりますし、オフィスで利用するのであればBridge Eが選ばれるでしょう。

現在、エレコムに関してはゲーミング機器とオフィス機器を明確に分けているため、これらの棲み分けは問題なく可能です。

しかし、仮に今後、本格的にメカニカルキーボードジャンルに参入するようなことがあるのであれば、競合の2.4GHzレシーバーを用いた場合のポーリングレートは1000Hzとなっているため、Bridge G1000対応が求められてきそうです。

加えて、それらのユーザーはエレコムファンである可能性も高く、HUGE Plusなどの機器との同時接続に関しては課題となるかもしれません。

まとめ|Bridge Eから見えた無線接続の現在

以上、Bridge EをきっかけとしたUSBレシーバーの「高性能化」と「共通化」についてのコラムでした。

Bluetoothは、メーカーを問わずドングルなしで接続できる汎用性に優れています。

一方で、専用レシーバーは入力機器からUSBまでの通信経路をメーカー側で管理し、安定性、セキュリティ、応答性能を用途に合わせて設計できます。

現在、無線対応の専用USBレシーバーは2極化が進んでおり、「複数機器を束ねる共通化」と「高速接続を重視した高性能化」の二つに進んでいると筆者は考えています。

市場規模を考えたときに先行していくのはおそらくは「共通化」でしょう。

エレコムに関しては、Bridge E対応機器を増やし、どれだけto Bシーンでのメリットを訴求できるかが、成功の鍵を握っているように感じます。

  • 初版執筆日:2026年8月7日
  • 最終更新日:2026年8月7日
  • 取材方法:独自考察
  • 参照・引用元:下記を参照
  • 利益相反:商品提供:なし 本稿収益化リンク:なし

参照した公式情報

Greeenkeysの更新情報を受け取る

スパムはありません。詳細については、プライバシーポリシーをご覧ください。

Greenkeysは成果型報酬広告のみで運営されており、Google広告はユーザービリティが低下するため使用していません。
メディア運営継続のために、記事を読んで良かったと思った方はBuy Me a Coffeeを通して支援をお願いします。

ブランド/企業のご担当者様へ:
製品設計やリリース前のフィードバックに関するご相談は
こちらからお進みいただけます。

Share me!
  • URLをコピーしました!

河村 亮介のアバター 河村 亮介 Greenkeys chief editor

日本のキーボード専門メディア「Greenkeys」編集長。GreenEchoes Studio代表。

メカニカルキーボード、自作キーボード、入力デバイスに関するレビュー・取材・検証・撮影・執筆を担当しています。これまで100製品以上をレビューし、日本語配列キーボードの互換性問題や国内市場動向についても継続的に情報発信しています。

日本語配列キーボードの互換性向上を目的とした業界連携プロジェクト「Japan Layout Alliance(JLA)」を設立し、国内外メーカーと協力した活動も行っています。

Greenkeysでは編集の独立性と透明性を重視し、提供品・広告・アフィリエイトの有無を記事内で明示しています。取材・執筆・製品監修・日本市場向けの情報設計に関するご相談も受け付けています。

著者プロフィールはこちら
→ 編集方針は こちら をご覧ください。
→ 取材・執筆・製品監修などのお問い合わせは こちら からお願いします。

Table of Contents