IST PLUSは「買いやすいIST PRO」ではなかった——発表会で感じたエレコム製トラックボールの次の一手

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本記事は、実機使用または継続検証に基づくレビューです。使用感や評価には筆者の主観を含みますが、編集方針に基づき、提供・広告・収益化の有無を明示したうえで執筆しています。製品提供・広告出稿・アフィリエイトリンクの有無は、本記事内に明記します。

2026年5月26日にエレコムから発表された親指操作トラックボール「IST PLUS」。

プレスリリース上では、IST PLUSは既存モデル「IST」に最新機能を搭載した新モデルとして紹介されており、位置づけとしては、標準モデルのISTと、上位モデルのIST PROの間に入るモデルということがわかります。

この説明だけを見ると、IST PLUSは「IST PROの機能を少し抑えた、買いやすい中間モデル」のようにも見えます。

しかし、実機に触れてみると、IST PLUSの意味はそれだけではないと感じました。

発表会では、開発担当者から支持機構の構造や静音化の考え方についても説明を受けることができました。

実機を触った印象としても、ボールローラー支持は単に人工ルビーとベアリングの間を埋めるための仕様ではなく、「軽さ」と「静音性」のトレードオフに対する、かなり現実的な答えとして設計されているように感じます。

私が感じたのは、IST PLUSは単に「買いやすいIST PRO」ではなく、その先を見据えた大きな潮流の入り口であるということです。

IST PLUSは、エレコムがトラックボールの操作感、接続性、メンテナンス性、ソフトウェア体験まで含めて、製品群全体を次の段階へ進めようとしていることを示すモデルだと感じています。

本記事では、新製品IST PLUSのハンズオンレポートと、エレコムの新製品発表会で感じた「次の一手」を中心に紹介します。

本コンテンツは、2026年5月19日に開催されたエレコムのプレス向け新製品発表会にGreenkeys編集長・河村亮介が参加し、発表内容・展示機のハンズオン・開発担当者への説明をもとに構成しています。

タップできる目次

IST PLUSは、ISTシリーズの「新しいスタンダード」

当日の登壇者はエレコム株式会社商品開発部ペリフェラル課 課長の古畑氏。

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当日は、IST PLUSの説明に加えてトラックボールのこれまでのあゆみや新製品特徴、さらにはアクセサリー類や今後の展望まで聞くことができました。

これまでのエレコムのトラックボールシリーズの歩みを見てみましょう。

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Screenshot

エレコムは2014年のEX-G以降、DEFT、HUGE、DEFT PRO、EX-G PRO、bitra、Relaconなど、さまざまなトラックボールを展開してきました。

2023年にはIST、2025年にはIST PROとHUGE PLUSを投入し、2026年にISTシリーズの新モデルとしてIST PLUSを追加する流れとなっています。

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新製品発表会資料より抜粋
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個人的にもトラックボーラーの筆者ですが、デビューはEX-G左手モデルでしたね。これは唯一無二のトラックボールです。その後、HUGEやbitraを経て、現在はHUGE PLUSがメイン機となっているエレコムファンです。

ISTシリーズは、2024年にトラックボールの業界標準を意味する「Industry Standard of Trackballs」の頭文字をとって生まれました。

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画像参照:https://www.elecom.co.jp/pickup/brand/contents/20240606-01/

直径36mmの大玉ボール、独自の支持ユニット換装システム、手を楽な姿勢で乗せて使えるエルゴノミクスデザインが、ISTシリーズの軸となっています。

今回のIST PLUSは、そのISTシリーズに寄せられたフィードバックをもとに進化させた「新しいスタンダードモデル」。

まずはハンズオンレポートを見ていきましょう。

IST PLUSハンズオンレポート

当日はプレス向けに実機の展示が行われました。

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まず気になったのはずらりと並んだISTシリーズ。

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左上から時計回りで|IST,IST Pro,IST PLUS(黒),IST PLUS(白)

大きさはほとんど変わりませんが、IST PLUSのホイール側面がオレンジとなっているため見分けやすいです。

最もシンプルな外装なのがIST(無印)です。側面にスイッチ類などはなく、非常にシンプルなルックスです。

上面のボタンは電源オンオフボタンで、裏返さなくても電源オンオフができるのも特徴の一つです。

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IST(無印)

続いてフラッグシップ機であるIST Pro。

革シボ模様が施された本体には高級感が漂います。

側面には親指で操作できる接続先設定ダイヤルが設置されています。

ボタン数が増えていたり、スクロールホイールに左右チルトボタンがついていたりと、まさにフラッグシップにふさわしい仕様と言えるでしょう。

こちらも上面にボタンがありますが、DPI調整ボタンとなっており、電源ボタンは側面に配置されている点はIST(無印)とは異なります。

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IST Pro

最後にIST PLUSです。

外装はIST(無印)とほとんど変わりませんが、本体側面に接続先切り替えボタンがある点で異なります。

ボタンの数も5つとIST無印モデルと変わりません。

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IST PLUS

IST(無印)との大きな違いは下記の3点です。

IST(無印)とIST PLUSの違い

  • オンボードメモリで設定を保存できるため、自身の設定がデバイスを跨いでもそのまま使える
  • ボタン5つが全て静音設計
  • 無線での同時接続台数が3台まで

IST(無印)版では、エレコムマウスアシスタントに対応していますが、ソフトウェア側での保存となっているため複数デバイスでの設定共有はできません。

複数デバイスでの設定共有ができるのは最上位機種のIST PROという立ち位置だったのですが、今回PLUSがラインナップされたことで「ちょうどいいポジション」ができた印象です。

性能比較表では、それぞれの差異が非常によくわかります。

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ご覧の通り、大きさはこれまでのISTシリーズとほとんど変わりません。

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一般的な親指操作トラックボールで採用例が多い34mm球ではなく36mm球をあえて採用することで、操球性の向上を図っている点も引き継がれています。

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エルゴノミクスに配慮された角度

裏面は2.4GHz帯の独自規格を用いた無線接続ドングルが収容されています。

駆動は単三電池(AA)一本となっており、バッテリー駆動には対応していません。

やはり電源ボタンが底面にないのは地味ですが良く考えられています。

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利用するレシーバーは、今回発表された「Bridge E」です。

こちらに関しては単品販売を予定しており、競合他社同様に今後このレシーバーを介して複数のエレコム製品とペアリングできるようにする計画があるような印象です。

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やはり今回の目玉はなんといっても「ボールローラー支持機構」でしょう。

ベアリング支持機構同様にモジュール式となっており、付け替えることができます。

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操球時の音も非常に静かな一方で、ベアリングまでとはいかないものの明らかに人工ルビー支持機構よりも軽い操球感が非常に心地よく感じました。

このボールローラー支持ユニットは「単品販売」も予定されており、既存のISTシリーズおよびHUGE PLUSの支持機構と交換可能。

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ISTやHUGE PLUSの魅力の一つは、「好みに応じて操球感をカスタマイズできる」ことです。

今回、このボールローラー支持機構モジュールが加わったことで、ISTおよびHUGE PLUSに関しては3つの支持機構を選択できるようになりました。

また、ボタンのカスタマイズを担う「エレコムマウスアシスタント」にも修正が加えられ、デモ版ではOSに応じた頻出ショートカットキーが簡単に設定できるようなUIとなっていました。

こちらに関しては、アップデート内容の正式アナウンスが待たれますね。

IST PLUSの進化ポイント

当日の発表で「進化ポイント」として挙げられていたのは、以下の4点です。

IST PLUSの進化ポイント

  • 新しい支持方式の追加
  • 静音対応
  • 進化した接続性
  • オンボードメモリ搭載

進化ポイントについて、順に見ていきましょう。

IST PLUSで採用された「ボールローラー支持機構」の思想の深さ

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IST PLUSで最も印象的だったのは、新開発の「ボールローラー支持機構」です。

このボールローラー支持機構は、これまでトラックボールで感じやすかった「軽さ」と「静音性」のトレードオフに対して、かなり現実的な答えを出しているように感じました。


トラックボールは、ボールそのものを指で転がす入力デバイスです。

そのため、センサー性能やボタン数だけでなく、ボールをどのように支えるかによって操作感が大きく変わります。

一般的なトラックボールでは、人工ルビー、ジルコニア、セラミックなどの支持球が用いられることがあります。

これらは静音性に優れる一方で、動き出しに抵抗感が出やすく、支持部にゴミや皮脂が蓄積すると操球感が低下しやすいという課題があります。

一方で、ベアリング支持は非常に軽く滑らかに動きますが、そのぶん操作音や転がり方の好みが分かれる場合があります。

これを解決したのが「ボールローラー支持機構」です。

ボールローラー支持機構の仕組み

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新製品発表会資料より抜粋

ボールローラー支持機構は、4つのステンレスボールの上に直径2.5mmのステンレスボールを乗せた内部構造となっています。

この機構により、滑らかさと静音性のバランスを両立していました。

ボールユニット開発関係者へのインタビューでは、「潤滑油などを使わない代わりに摺動性(しゅうどうせい)※1の高いPOM素材をトップハウジングに使用した」とのことで、非常に滑らかな動きを実現しています。

また、ボトムハウジングには、耐久性と嵌合(かんごう)性※2を高めるためにPOMではなくPPS素材を使った点も非常に興味深い。

トラックボール特有のゴミが溜まる問題に対しては排出穴を作ることで解決し、さらには「お湯洗い」ができるとのことです。

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お湯で洗って吸水性のあるシートの上で置いておけば自然と水分が抜けて乾くようです。
潤滑油を使っていたらこのメンテナンスはできないでしょう。

ボールローラー支持の感触は「いいとこどり」な印象

会場でIST PLUSのボールローラー支持モデルを操作してみると、第一印象はかなり良好でした。

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ボールの転がり始めは「すっ」とスムーズ。

それはベアリングのような滑らかさではありつつも、じゃりっとしたベアリング特有の音はほとんど感じません。

また、ベアリングのように転がり続けるような感じではなく、ある程度回ると抵抗感が生まれて自然と止まる、言うなればベアリングのスムーズさと人工ルビーのほどよいトラッキング感のまさに「いいとこどり」をしているような操球感を覚えました。

その「いいとこどり」感は発表資料によって裏付けられています。

各支持球ごとの摩擦力の比較検証データでは、人工ルビーと比較すると、ボールローラー支持は約25%の摩擦低減が見られたとのこと。

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人工ルビー支持機構のモック

やはり、ベアリングは圧倒的なスムーズさを誇りますが、「動きすぎる」と感じる方も少なくないでしょう。

そういった意味では、人工ルビーとベアリング支持の中間に位置するのがこの「ボールローラー支持機構」なのだと言えます。

ただし、操球感には個人の好みに左右される部分が大きいのも事実。

そういった「各個人のニーズ」に対応できるよう、IST PLUSでは「ベアリング支持モデル」と「ボールローラー支持モデル」の二つをラインナップしています。

また、支持機構自体がモジュール式で交換可能となっており、各モジュールも単品で購入できるため、好みに応じたカスタマイズができるという点で、トラックボーラーに対する細やかな配慮が見られます。

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マニア目線とはなりますが、これはかなり嬉しい配慮です。

ボールローラー支持機構はなぜこんなにも静かなのか?

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ハンズオンで実際に3つの支持機構を試用したざっくりとした印象は下記のような感じです。

  • 静音性:人工ルビー>ボールローラー>ベアリング
  • 摩擦の少なさ:ベアリング>ボールローラー支持>人工ルビー

摩擦の少なさに関しては、データでも示されたように納得する要素があります。

一方で、「静音性」に関してはどうも腹落ちしません。

ボールローラー支持機構に関して言えば、可動部分があるのであればベアリング同等の「ノイズ」が発生してもおかしくないはずです。

その点について開発スタッフに聞いたところ「ボールの回転方向と支持球の回転方向が一致している分、ベアリングと比較すると操作音が小さい可能性がある」とのこと。

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これには「なるほど」と、思わず唸りました。

ベアリング支持は滑らかさに優れる一方で、構造上、ボールの動く方向によっては支持部に無理な摩擦がかかる場面があります。

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ベアリング支持機構(左)は、回転軸が一つしかない。

ベアリング支持機構は3方向から支持しており、その回転軸がボールの回転方向と必ずしも一致するわけではありません。

よって、この構造では回転軸と一致していないベアリングとボールの間で摩擦力が発生してしまい、これがノイズの原因となっている可能性があります。

一方、ボールローラー支持は、支持球が点で支えながら回転する構造のため、ボールの動きに対してより自然に追従しやすい。

この構造により、滑らかさを確保しながら、ベアリング支持とは異なる静音性を実現しているという説明でした。

支持ユニットはこれまでのシリーズとも互換性あり

IST PLUSで重要なのは、ボールローラー支持モデルとベアリング支持モデルが用意されていることだけではありません。

この支持ユニットは、ほかのエレコムのトラックボールマウスシリーズと互換性を持つモジュールなのです。

つまり、これまでに販売されてきた「ISTシリーズ」および「HUGE PLUS」に対しても、新たに販売される「ボールローラー支持ユニット」が利用できます。

支持ユニット交換対応トラックボールシリーズ

シリーズ型番操作タイプ支持方式接続
ISTM-IT10URシリーズ親指人工ルビー有線
ISTM-IT11URシリーズ親指ベアリング有線
ISTM-IT10DRシリーズ親指人工ルビー2.4GHz無線
ISTM-IT11DRシリーズ親指ベアリング2.4GHz無線
ISTM-IT10BRシリーズ親指人工ルビーBluetooth
ISTM-IT11BRシリーズ親指ベアリングBluetooth
IST PROM-IPT10MRSシリーズ親指ベアリング有線/2.4GHz/Bluetooth
HUGE PLUSM-HT1MRBK人差し指・中指ベアリング有線/2.4GHz/Bluetooth
情報参照元:エレコム

つまり、購入時に選んだ操球感に固定されることなく、後から支持方式を交換できるのです。

ISTから始まったこの「支持方式のモジュール化」は「支持方式を選択できる自由」をユーザーニーズにあわせて体現したものだと言えるでしょう。

これは、キーボードでいうスイッチ交換やキーキャップ交換に近い考え方であり、さらなる「沼」へ誘う危険な匂いがします。

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これは「入り沼戦略」ですね。
キーボードでもそうですが、カスタマイズできる楽しみをトラックボールに落とし込んだ発想であり、一人が一つの製品を保持して買い替えないという固定概念を壊すものになりそうです。
これは、市場活性化につながる大きなキーワードだと考えています。

注目すべきはメンテナンスキット

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一番右がメンテナンスキット

実は今回の「ボール支持機構」の発表と同じくらいのインパクトを感じたのは、合わせて発表された「トラックボール用ボールメンテナンスキット」です。

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これはトラックボーラーなら共感できるのではないでしょうか。
この課題感を汲み取って、メンテナンスキットを製品化しているという部分だけを見ても、エレコムの市場ニーズの汲み取りの本気度が伺えます。

このメンテナンスキットは、トラックボールが抱える「滑りが悪くなって使いにくくなる」という問題を劇的に解決できる可能性を秘めています。

このメンテナンスキットの正体は「フッ素コーティング剤」です。

セット内容は塗布液(フッ素コーティング剤)、ハケ、クロスとなっており、塗布後5秒で使用可能となるとされています。

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発表会資料より

使い込んだボールに塗布すると摩擦が約半分まで減少し、耐久性も約2倍に向上するとされています。

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発表会資料より

トラックボールは、操球感が操作性を左右するといっても過言ではありません。

その操球感は使っていくうちに低下していくため、定期的な「メンテナンス」が必要というのは、光学センサー式マウスとの大きな違いと言えるでしょう。

トラックボーラーの中で定番のメンテナンス方法となっているのがこの「フッ素コーティング」です。

大手ECモールでも、トラックボールマウスの関連商品としてフッ素系コーティング剤を見かけることがあり、ボールの滑りを整えたいユーザーが一定数いることがうかがえます。

今回、エレコムが専用メンテナンスキットを用意したことは、そうしたユーザー行動をメーカー側が正式に受け止めたものとも見えます。

これは、メーカー側がトラックボールを「買って終わり」の製品ではなく、操作感を維持し、好みに合わせて整えていく道具として捉えたことを意味しています。

「ユーザーの声を製品に活かしたい」というエレコムだからこそできた商品だと感じました。

エレコム マウスアシスタントもアップデート

IST PLUSでは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア面の改善も進められています。

発表会資料では、エレコム マウスアシスタント6.3.0のアップデート内容として、IST PLUS対応、Bridge E対応、プロファイル管理機能、UI改善がアナウンスされました

レシーバータイプとして新たに「Bridge E」が選択できるようになり、それに応じたセキュリティコード設定が可能となります。

また、設定したプロファイルを管理・切り替えができる機能も搭載されるとしています。

今後はHUGE PLUSのオンボード対応、トラックスクロール、レイヤー機能、プリセット拡張、カスタムマクロ対応なども検討しているとのこと。

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トラックスクロールの実装にはHID Remapperなどの外部カスタマイズデバイスを用いているケースが多かったですが、これが公式機能として利用できるのは素晴らしいですね。
こういった点もユーザーニーズの汲み取りが非常にうまいと感じています。

マウスアシスタントから見えるユーザーフレンドリーなUIに対する本気度

また、UI設計担当の方からのお話は非常に刺さるものがありました。

発表会では、開発担当者から「難しいことをいかに簡単に設定できるようにするか」を念頭に置いて開発しているという説明もありました。

これは、マクロパッドを含めたトラッキングデバイスの高機能化に対する一つの答えだと感じています。

近年の高機能マウスやトラックボールは、できることが増える一方で、設定画面が複雑になってきました。

ボタン割り当て、プロファイル管理、マクロ、接続先の切り替えなど、できることが増えた一方で適切に設定するためにはある程度の知識が必要です。

例えば、コピーショートカットボタンを設定する場合でも、OSによってショートカットキーが異なることに加えて、そのショートカットキーを登録するためには適切な手順を踏まなければいけません。

つまり、便利なことを実装するためには、ユーザー側がある程度学ぶ必要がある、という構造となっているのです。

エレコムはこれを「UI側」で解決しようとしています。

いくら便利な機能があったとしても、「誰でも簡単に」使うことができなければその機能は使われることはないでしょう。

ニッチマーケットにありつつも便利な商品を誰もが手の届きやすいところに持ってくる。

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参照:https://www.elecom.co.jp/ir/purpose/

これはまさにエレコムがパーパスとして掲げる「Better being より良き製品・サービス、より良き社会、より良き会社を。」 を体現しているのだと感じました。

まとめ:IST PLUSはエレコムの「次の一手」を予感させる商品

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以上、IST PLUSのハンズオンレポートおよび発表会の様子をお伝えしてきました。

IST PLUSおよび周辺アクセサリのリリース、エレコムマウスアシスタントのアップデート内容を見ると、エレコムは入力体験全体を含めた広範なアップデートを模索しており、ユーザーに「選ばれる製品つくり」をより洗練させているような印象を受けました。

  • ボールローラー支持によって、人工ルビーとベアリングの間に新しい選択肢を作る。
  • 支持ユニット交換によって、操球感をあとから変えられるようにする。
  • HUGE PLUSにもボールローラー支持を広げる。
  • メンテナンスキットで、ボールの滑りを維持する手段を用意する。
  • マウスアシスタントの改善で、多機能化するトラックボールを扱いやすくする。

これらIST PLUSを通しての変化は、エレコムの商品群全体の変化へつながる布石のように感じます。

ハードウェアとしての選択肢の拡大だけでなく、独自無線通信ドングルのアップデートにより、自社製品のシームレスな接続性を実現する取り組みは、おそらくトラックボール・マウス製品群だけでなく、キーボードにも波及していくと考えるのが自然でしょう。

入力機器の文脈では、キーボードの「キーマップカスタマイズ」が主流となりつつあり、エレコムのキーボード群に関しても「エレコムキーボードアシスタント」の登場が待たれます。

入力機器を広く取り扱うメディアとして、ユーザーニーズに寄り添った製品開発を積極的に行うエレコムの姿勢は、デスク周り製品を作る日本企業の希望にも見えました。

今後の展開についても、Greenkeysでは注目していきたいと思います。

エレコム|トラックボール▷▷

  • 初版執筆日:2026年5月26日
  • 最終更新日:2026年5月26日
  • 取材方法:メーカー公式リリース・プレス向け発表会資料
  • 参照・引用元プレスリリース・プレス向け発表会資料
  • 利益相反:商品提供:あり 本稿収益化リンク:なし

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河村 亮介のアバター 河村 亮介 Greenkeys chief editor

日本のキーボード専門メディア「Greenkeys」の編集長です。
トラックボールとスモールキーボードが趣味。
メカニカルキーボード、自作キーボード、入力デバイスアクセサリーに関するレビュー・取材・検証・撮影・計測・執筆を一貫して担当しています。
これまで100製品以上のキーボードや入力デバイスをレビューし、日本語配列キーボードの互換性問題に関する情報整理と市場解説を行っています。
また、日本語配列キーボードの相互互換性向上を目的とした業界連携プロジェクト Japan Layout Alliance(JLA)を設立し、国内外メーカーと協力した活動を進めています。
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Greenkeysでの編集・取材活動に加え、GreenEchoes Studioでは、入力デバイス関連製品の情報設計、日本市場向けの訴求整理、製品監修などにも取り組んでいます。
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