オーソリニア配列は本当に指の移動を減らす?75%日本語配列キーボードの運指距離を計測した結果

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コラム
この記事の位置づけ
本記事は、キーボード市場や製品動向についての筆者見解を含むコラム記事です。事実関係の確認に努めつつ、分析や評価には筆者の視点が含まれます。レビューやニュースとは異なる、意見性のあるコンテンツとしてご覧ください。

現在、世の中で利用されているキーボードの多くが「ロウスタッガードレイアウト」と呼ばれる「横ずれ」の配列です。

これは、タイプライター時代から続くもので、それが現代まで続く定番となった、いわゆる「デファクトスタンダード」的な立ち位置のキーレイアウトとなっています。

ただし、現在においてキーレイアウトはもっと自由となりました。

「横ずれじゃなくてもいいんじゃない?」という考えのもとに考案されたのが「オーソリニアレイアウト(直行配列)」です。

碁盤の目のように整ったレイアウトは非常に美しく、「効率よくタイピングできる」なんて言われているのを聞いたことがあります。

うーん、本当にそうなのでしょうか?

ということで、75%日本語配列をオーソリニア化したら、本当に効率的なレイアウトになるのか、検証してみました。

Table of Contents

結果:一部のキーを除いて運指距離は大幅に短縮

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今回の検証で、オーソリニア化によって多くの指の平均運指距離は短くなりました。

一方で、右手小指の運指距離だけがわずかに増加しています。

具体的には、右手小指ホームポジションを起点とした際のBackspaceや¥、^など右上に集まるキーが、ロウスタッガードレイアウトよりも「遠くなる」という結果が得られました。

ただし、距離が増えた記号キーの多くは入力頻度が高くないため、実用的なタイピングにおいては、そこまで大きなデメリットとは言えないと考えます。

実用上の焦点は、比較的使用頻度の高いBackspaceをどこへ移すか、という配列設計になりそうです。

オーソリニアレイアウトは指をまっすぐ動かしやすい

オーソリニア配列は、文字キーを上下方向へ移動しやすいことが特徴です。

こちらの図をご覧ください。

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画像引用:HHKB Life

このように、通常の横ずれのレイアウトでは、ホームポジションを起点として右方向へずれながらタイピングをしていることがわかります。

キーボードは体の中心に置いているのに、手だけが左上から右下へ絶えず往復している…と考えると、ちょっと違和感があります。

ただし、オーソリニアレイアウトであれば、指を斜めではなく「上下」に動かすタイピングが行えます。

体軸と一致した動きをするという、なんともすっきりした感覚がある…ような気がしてきたでしょう。

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このあたりはフィーリングが大事です。

検証条件

それでは、今回の実験の検証条件について提示します。

ベースとした75%キーレイアウトはこちらです。

75JIS

アローキーを独立させた贅沢な75%日本語配列ですね。

これをオーソリニアへ変換したモデルがこちらです。

75JIS Ortho

キーレイアウトの関係上、すべてのキーが同じ大きさにはしていません。

スペースバーはあえて分割とし、Enterキーは日本語配列で採用しているISOEnterサイズを踏襲して、縦長サイズとしました。

下記が検証条件です。

項目条件
ピッチ1u=19.05mm
距離キーキャップ中心から中心までの直線距離
ホームキーA・S・D・F・J・K・L・;
集計各担当キーを1回ずつ押す等重み
対象外F列、ナビゲーション、Win、Alt、Fn

ホームポジションに関しては、下記図を参考とし、それぞれの運指範囲は日本で普及しているタッチタイピング理論に基づきました。

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画像引用:HHKB Life

たとえば右手人差し指は、Jをホームとして6、7、Y、U、H、J、N、Mを担当します。

右手小指は「+ ;」をホームとして、「0」列よりも右側担当するものとしました。

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一般的なタッチタイピングの守備範囲と同じです。

検証結果

得られた検証結果はこちらです。

検証結果

  • 多くの指で運指距離が短縮
  • 右手小指だけ平均距離が増加

多くの指で短縮、右手小指だけ平均距離が増加

各指の担当キーを等しい重み(各ホームポジションと担当するカバー範囲キー数)で平均すると、中指・薬指を含む多くの指で運指距離が短くなりました。

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例:左手小指の運指距離

平均距離が増えたのは右手小指だけです。

担当指ロウスタッガードオーソリニア
左手小指30.06mm26.04mm-4.03mm
左手薬指20.41mm19.05mm-1.36mm
左手中指20.41mm19.05mm-1.36mm
左手人差し指24.65mm23.97mm-0.69mm
右手人差し指25.39mm23.97mm-1.42mm
右手中指20.41mm19.05mm-1.36mm
右手薬指20.41mm19.05mm-1.36mm
右手小指37.96mm39.22mm+1.26mm

右手小指は担当キー数も16個と多く、右中指・薬指の各4個と比べて守備範囲が広くなっています。

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これは英語配列でも同様ですね。
なぜかキーボードはホームポジションを起点として、右側に対して長いのです。結果として右手小指が頑張らないといけません。

遠くなったのはEnterではなく、右上のキー

オーソリニア化によって距離が増えたキーは9個でした。

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そのうち6個が右手小指の担当です。

左手人差し指では5とT、右手人差し指ではNが遠くなっていますが、それぞれの指全体では平均距離が短縮しています。

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オーソリニアキーボードに持ち帰ると、5とT、Nが遠く感じていたのは気のせいじゃなかったようです。
また、ロウスタからオーそに持ち替えると、Bがやけに遠く感じたのは気のせいではなかったようですね。

移動距離が増加したキーの中でも増加距離が突出して大きかったのが「バックスペースキー」です。

なんど、1cm以上も遠くなってしまいました。

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小指のホームポジションを起点に遠くなったバックスペースキー。その差はロウスタ比で+12.5mmにもなった。

右手小指で距離が増えたキー

キーロウスタッガードオーソリニア
Backspace72.70mm85.19mm+12.50mm
¥57.35mm68.69mm+11.34mm
^44.93mm53.88mm+8.95mm
38.40mm42.60mm+4.20mm
[38.40mm42.60mm+4.20mm
@23.81mm26.94mm+3.13mm
Enter59.15mm57.94mm-1.21mm

意外にもEnterキーまでの距離は若干小さくなったのは発見でした。

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結果を踏まえた考察|BSキーは移動したほうがいい

右手小指の移動量の増加、つまり75%日本語配列をオーソリニア化すると「右手の負荷量が増加する」という事実が判明しました。

一方で、この結果は、実用上はそこまで大きなデメリットにはならない可能性があります。

¥や^は距離の増加量こそ大きいものの、一般的な文章入力では頻繁に押すキーではありません。

そのため、右手小指の平均距離が増えたからといって、実際の疲労が同じ割合で増えるとは限りません。

ただし、物理的に1cm以上遠くなってしまった使用頻度が高い「BS」キーについては、物理配置自体を見直す必要があると考えます。

Backspaceキーを右手小指から外す二つの方法

今回のオーソリニア配列には、中央に左右2uずつの分割Spaceがあります。

この構造を生かすことで、横幅を増やさずにBackspaceを再配置できます。

また、別案としては、Enterキーを1uサイズにして、その下にBSを配置する方法も有効でしょう。

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右側の分割SpaceをBackspaceにする

右側2uキーをBackspaceへ変更する案。

右親指のホーム位置そのものへ配置するため、キー中心間の移動距離は約0mmになります。右小指から最も遠く、比較的使用頻度の高いキーを完全に分離できる点が最大の利点。

ただし、いつもの配置とは異なるため慣れるまでに時間がかかる

Enterを1u化し、]の右隣へBackspaceを置く

縦2u Enterを上側1uへ短縮し、空いた下側、つまり]キーの右隣へBackspaceを置く案。

従来どおり右手小指で操作しながら、移動距離を大きく短縮できる。

BS配置;からの距離比較
現在のオーソリニア85.19mm基準
案2:]の右隣57.15mm−28.04mm
通常のロウスタ72.70mm案2より15.55mm長い

オーソリニア化では「整列後の再配置」が重要

今回の結果から、オーソリニア化は文字部分の運指距離を短くしやすい一方、既存の日本語配列をそのまま格子状に並べるだけでは、右手小指側に課題が残ることがわかりました。

重要なのは、キーを縦横に整列させることだけではありません。

整列によって生まれた「空間」を使用頻度と担当指の負荷に応じて再設計することが重要と言えそうです。

右側の分割SpaceへBackspaceを移す案は、その一つの答えになる可能性があります。

Kawamura top RKawamura

Lofree Flow Lite JISのアンケート結果では、多くの人が左手親指で変換作業を行なっていることが判明しています。よって、右分割スペースバーは他のキーとして活用できる可能性があります。

今回の検証でわからないこと

本稿で比較したのは、キー中心間の幾何学的な距離です。実際の疲労や入力効率を直接測定したものではありません。指の長さ、手の大きさ、手首の角度、キー荷重、実際の指の軌道は考慮していません。

また、指別平均は各担当キーを1回ずつ押す等重みです。実際の日本語文章でのキー使用頻度を掛け合わせると、Backspaceの配置変更による効果がより明確になる可能性があります。

まとめ

以上、75%日本語配列をオーソリニア化した際の各ホームポジションからのタッチタイピング範囲の移動距離の変化について解説してきました。

多くの移動距離が小さくなるという点では、オーソリニアレイアウトはロウスタッガードレイアウトよりもタイピングにおいては合理的なキーレイアウトといっても差し支えないでしょう。

一方で、既存のキーレイアウトでは使用頻度の高いバックスペースキーが遠くなってしまうため、物理配列の見直しが必要と言えます。

Kawamura top RKawamura

そもそも、使用頻度の高いバックスペースキーがあんなに遠い位置にあるロウスタッガードレイアウト自体に問題があるような気もしますが…笑

一方で、今回の距離計測は、キーの使用頻度を加味していないため、あくまでも機械的な結論です。

キー使用頻度に関しては、何を母国語としてタイピングするのかや、プログラミングや文字入力用途などで大きくことなるため、今回は検証していません。

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この辺り、実際に検証したら面白そうですが、かなり大規模な実験となりそうなので小規模なウチでは難しいかもしれません。

オーソリニアレイアウトが効率的となっている一方で、これが現代に普及していないのは、やはりロウスタッガードレイアウトからのスイッチングコストが高いことが挙げられます。

ただし、市販品がないわけではありません。

Keychron Q15 Maxのような、既存のロウスタッガードレイアウトへの見直しを迫るようなチャレンジングな製品も存在します。

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画像参照:Amazon

また、スモールキーボードとはなりますが、Chosfox Geonix Rev.2.5も存在します。

日本語配列オーソリニアレイアウトを作ってみたいブランドさんがいたら、ぜひ一緒にやってみたいですね。

あなたはオーソリニアレイアウト、どう感じますか?

本稿で使用した配列モデルと運指距離の計算は、Greenkeysによる独自検証です。特定製品からの提供や広告を前提とした内容ではありません。

  • 初版執筆日:2026年8月15日
  • 最終更新日:2026年8月15日
  • 取材方法:独自コンテンツ
  • 参照・引用元:距離計測に生成AIを使用
  • 利益相反:商品提供:なし 本稿収益化リンク:なし

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河村 亮介のアバター 河村 亮介 Greenkeys chief editor

日本のキーボード専門メディア「Greenkeys」編集長。GreenEchoes Studio代表。

メカニカルキーボード、自作キーボード、入力デバイスに関するレビュー・取材・検証・撮影・執筆を担当しています。これまで100製品以上をレビューし、日本語配列キーボードの互換性問題や国内市場動向についても継続的に情報発信しています。

日本語配列キーボードの互換性向上を目的とした業界連携プロジェクト「Japan Layout Alliance(JLA)」を設立し、国内外メーカーと協力した活動も行っています。

Greenkeysでは編集の独立性と透明性を重視し、提供品・広告・アフィリエイトの有無を記事内で明示しています。取材・執筆・製品監修・日本市場向けの情報設計に関するご相談も受け付けています。

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