2026年7月29日、Keychronは、ゲーミングマウス向けのオープンソースファームウェア「ZGM」を発表しました。
ZGMは「Zephyr Gaming Mouse」の略称です。
Zephyr RTOSを基盤として、低遅延な入力処理や有線・無線接続、センサー、ボタン、スクロールホイールなどを扱える、ゲーミングマウス向けの共通基盤として開発されている様子。
正式公開は2027年第1四半期を予定しているようです。
このファームウェア搭載となる第一号機は、おそらくはG6 HEよりも先に日本でクラウドファンディングを実施していた「T1 HE」となると編集部では見ています。
これまでKeychronがオープンソースとして開いてきた中心は、QMKを採用したキーボードの製品別ファームウェアとVIA用定義。
2026年にはハードウェア設計も公開しましたが、こちらは商用複製を制限したsource-availableとなっており、あくまでもコミュニティで楽しむ用途に限られます。
今回、キーボードではなく、マウスを動かす共通ファームウェア基盤をKeychron自身がGPLで公開しようとするZGMは、これまでより一段踏み込んだ取り組みといえるでしょう。
自作キーボードや入力デバイスの文化から得たものを商業製品へつなぎ、その開発で得た成果を、再びコミュニティが利用できる形へ戻していく。
ZGMは、その循環をつくる基盤になるかもしれません。
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ZGMはゲーミングマウス向けのオープンソースファームウェア
ZGMは、Keychronが開発を進めるゲーミングマウス向けファームウェアです。
すでにZGM公式サイトとGitHubリポジトリが公開されています。
ZGMが掲げている主な方向性は次のとおりです。
- 低遅延な入力処理
- ボタンやクリック処理のカスタマイズ
- 光学センサーの設定と読み取り
- スクロールホイールの制御
- RGBやステータスライトへの対応
- 有線・無線接続への対応
- バッテリーと消費電力の管理
- 複数のハードウェアに対応できるモジュール型設計
- 開発や検証へコミュニティが参加できる環境
ライセンスには「GPL-3.0」が採用されています。
公開後は、ソースコードを確認するだけでなく、ライセンスの条件に従って改変や再配布、プロジェクトへの貢献も可能になります。
KeychronはZGMについて、キーボードで広がったオープンソースの入力デバイス文化を、マウスへ拡張するプロジェクトと説明しています。
なぜQMKやZMKではなく、マウス専用の基盤を作るのか
キーボード分野では、QMKやZMKといったオープンソースファームウェアが広く利用されています。
QMKやZMKにもポインティングデバイスを扱う機能はあります。
しかし、ポインター操作へ対応することと、現代的なゲーミングマウス全体を制御することは同じではないのかもしれません。
ゲーミングマウスでは、カーソルを移動させる以外にも、HEスイッチの制御など、さまざまなものが求められるようです。
ZGMもZMKと同じく、Zephyr RTOSを基盤としており、さまざまな設定を独立したレイヤーとして扱い、ハードウェアごとに交換・拡張しやすい構造を目指しているとされています。
おそらくは、キーボード向けのファームウェアへマウス機能を継ぎ足すのではなく、最初からゲーミングマウスを想定した共通基盤を作ろうとしているように見えます。
Kawamuraこのあたりについてはかなり専門的な内容となるので、詳細についてはGithubをご覧いただければ幸いです。
ハードウェア設計の公開から、ファームウェアの公開へ
Keychronは以前から、QMK/VIA対応キーボードのファームウェアやJSONファイルをGitHubで公開してきました。
2026年4月には、キーボードとマウス83モデル、640点を超えるハードウェア設計ファイルも公開しています。
ただし、このハードウェア設計ファイルは、厳密には一般的な意味でのオープンソースではありません。
個人利用や教育、非商用の改造、互換アクセサリの設計などには利用できますが、Keychron製品そのものや、実質的な複製品の製造・販売には制限があります。
Keychron自身も、これを「open source」ではなく「source-available」と説明しています。
一方、ZGMにはオープンソースライセンスのGPL-3.0が採用されています。
ハードウェア設計では、自社製品の複製を防ぎながら、学習や改造、互換アクセサリの開発へ利用できる範囲を開きました。
ZGMではさらに一歩踏み込み、入力デバイスを動かすファームウェア基盤そのものを、オープンソースとして公開しようとしています。
両者は公開条件こそ異なりますが、完成品を販売して終わるのではなく、その周辺で新しい開発やカスタマイズが生まれる余地をつくるという方向性は共通しています。
商業製品で得た成果をコミュニティへ戻すということ
Greenkeysでは以前、Keychron Orca echoを題材として、自作キーボード文化の中で育ったアイデアを商業製品へつなぐことについて考えました。
左右分割、カラムスタッガード、レイヤー操作、親指トラックボール。
こうした考え方は、特定の製品やメーカーが突然生み出したものではありません。
個人開発者や自作キーボードコミュニティによる、長い試行錯誤の積み重ねによって育ってきたものです。
そのため、自作文化で育った入力体験を商業製品へ取り入れる動きに対しては、「コミュニティのアイデアを利用しているだけではないか」という見方が生まれることもあります。
ただし、商業化とコミュニティは、必ずしも対立するものではありません。
量産製品によって新しい入力体験を多くの人へ届け、その製品をきっかけに自作キーボードや個人設計のデバイスへ関心を広げる。
さらに、商業製品の開発で得た技術や基盤を、コミュニティが再利用できる形で戻していく。
そこまでの循環が生まれるのであれば、メーカーはコミュニティからアイデアを受け取るだけの存在ではなくなります。
ZGMファームウェアだけでなく、Keychron独自のZMKファームウェアをベースにしたKeychron Launcherの仕組みが気軽に使えるようになることは、この循環にとって大きな意味をもつのではないでしょうか。
まとめ
以上、ZGMファームウェア公開についてお伝えしてきました。
正式公開は2027年第1四半期を予定しています。
個人的にはこのファームウェアを含むオープンソース化の動きが拡大し、自作マウスやトラックボール、キーボードだけでなく、小規模メーカーによる新しい入力デバイスにも使われる共通基盤へ育つことを期待しています。
Keychronが掲げる「オープンソースの入力デバイス文化をキーボードからマウスへ広げる」という構想が、本当の意味でコミュニティへの環流につながるのか。
これは今後も追っていきたいですね。
- 初版執筆日:2026年7月30日
- 最終更新日:2026年7月30日
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