2026年6月11日、Keychronはロープロファイルメカニカルキーボード「J9」「K3 HE/K3 Ultra」の3機種を発表しました。
J9に関しては、すでに日本販売代理店であるコペックジャパンから購入可能となっており、K3 HE/K3 Ultraに関してはクラウドファンディングサイト「Makuake」にて支援募集を開始しています。


この両者に共通しているのが、75%日本語配列レイアウトを用意している点です。
このレイアウト、よく見ると「ちょっと変わっている」ことがわかります。
実はこの「日本語配列75%レイアウト」というのは、日本語配列特有の「悩み」があります。
本記事では、筆者の経験をもとにこの「悩み」を深堀していきます。
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75%日本語配列キーボード特有の悩みとは

75%レイアウトキーボードは、日本国内では人気の物理レイアウトです。
コンパクトサイズながらもファンクションキーまで備えているため、少ないキー数でフルサイズ同等に快適にタイピングができるのが大きな特徴です。
合わせて、フルサイズやTKLと比較しても横幅が短いため、デスクがそれほど広くない日本の「デスク事情」と相まって人気となっていると予想されます。
この人気キーボードサイズを日本語配列で作ると、Z行のズレとアローキーのバランスが非常に取りにくいという事情が発生するのです。
ここではその特有の事情について、順番に説明していきます。
日本語配列は世界的にはかなり特殊な物理配列

日本語は、ラテン文字をそのまま入力する言語とは異なり、かな入力やローマ字入力から変換を経て文章を入力するケースが一般的です。
よって、ラテン語をベースとする言語と比較すると、ラテン語で入力→変換、という作業を経て「日本語」を入力するという世界的にも珍しい入力形態をとっています。
このため、独自の「日本語配列」が発達し、現在日本で販売されているキーボードの多くが「日本語配列」となっていると考えられます※。
※あくまでも一般的な話であり、歴史的事実を代表する論述ではありません。
よって、世界的に見ると日本語配列は非常にマイナーであり、世界中見渡しても日本語配列を使っている国は日本しかないのです。

外径の制限=キーレイアウトの制限

こういった事情もあり、世界のキーボードのスタンダードは「英語配列」です。
よって、日本語配列キーボードを作成する場合、英語配列キーボードをベースに作成されます。
ここで重要になってくるのが「外径サイズ」です。
筆者個人の感覚という前置きをしますが、75%キーボードの外径は「16u」というサイズを取ることが一般的となっている印象を持っています。
これは、Esc行で言うと、横に一般的なサイズのキー(縦横約18.5mmサイズのキー)が16個分並べたサイズです。
よって、日本語配列はこの横幅をベースに再構築される形を取っているキーボードブランドは多い印象です。
75%日本語配列におけるZ行のズレ問題
75%日本語配列キーボードは、英語配列キーボードの外径サイズを基準に作られるケースが多いです。
ここで問題となるのが、日本語配列のZ行はキー数が一つ多いということ。
この図を見てください。

このように、日本語配列ではZ行の「ろ(_ \)」というキーが英語配列と比較して一つ多いのです。
この状態では、右Shiftキーのサイズは十分に確保できません。
これを解決するために各メーカーが様々な方法を取っています。
各メーカーの設計方針とトレードオフ
| 設計方針 | メリット | デメリット | 採用モデル |
|---|---|---|---|
| Z行をちょっと左へずらす | 逆T字アローキーを作りやすい | 既存配列との感覚差が出やすい いわゆるマッスルメモリー問題 | Realforce RC1/HHKB JP/NuPhy Node75 JIS/Air75 v3 JIS/Lofree Flow LITE JISなど |
| アローキーを横並びにする | タイピング時の違和感が少ない | 横一列のアローキーは受け入れが難しい可能性がある | Keychron K2など |
| 右Shiftと「↑」を兼用する 右Sihftと「_ \」を兼用する | タイピング時の違和感が少ない | 右Shiftを使うユーザーには影響が大きい | Keychorn K2 HEなど |
| 上アローキーを右へずらす | タイピング時の違和感が少ない | 見た目上のズレが気になる可能性がある | Keychron J9/Keychron K3 HEなど |
Z行をちょっと左へずらす
もう一度この画像を見ましょう。

このように、右シフトを1uサイズで入れ込むためにはあと「0.25u」足りません。
よって、「ろ」より左側のZ行を「0.25u左へずらす」と解決します。

Kawamuraこれは私が配列監修を行ったFlow LITE JISで採用しています。
実はこのレイアウト、日本の老舗キーボードブランドではかなり前から採用されています。
HHKB Professional Classic Type-S 日本語配列/白

REALFORCE RC1 日本語配列 アイボリー

このほかにも、比較的多くの日本語配列モデルはZ行のズレを許容しています。




一方でこの対応方法でもっとも大きな問題となるのが「マッスルメモリー問題」です。
マッスルメモリー(筋記憶)とは、一度鍛え上げられた筋肉がその状態を記憶し、トレーニングを一時的に中断して筋肉が衰えてしまっても、再開すれば以前の筋肉量や筋力へ短期間で戻りやすくなる現象を指します。
つまり、習慣化された「タイピング」という行為では、無意識のうちにZ行のズレを学習している可能性があります。
この「0.25u」分のズレは、タッチタイピングを習得した人ほど、無意識に「打ちにくい」と感じる可能性があるのです。
Z行をずらさずに解決する方法
最も簡単な解決方法はZ行を左へ0.25u分ずらすことです。
一方で、マッスルメモリー問題を重要視するのであれば、この方法は避けるべき、という考えも十分理解できます。
その考えを重要視してきたブランドがあります。
それは「Keychron」です。
KawamuraKeychronのCEOであるNick氏と以前日本語配列の話をした際に、マッスルメモリー問題からZ行のズレは推奨したくない、と伺いました。
おそらく、Keychronは、日本語配列メカニカルキーボードを日本に導入した稀有なブランドの一つです。
彼らは、日本市場に参入した当初からこの「Z行のズレ」をデフォルトのまま日本語配列キーボードを作り続けているように思います。
彼らがとってきた「Z行をずらさないレイアウト」は下記の3パターンです。

パターン1:アローキーを横並びにする
まず、Keychron K2などで見られたレイアウトが、アローキーをbottom rowに横一列で並べるパターンです。

これであれば、Z行をずらすことなく「ろ」を配置することが可能です。
一方で、このレイアウトのデメリットは、アローキーが逆T字に配置できないということが挙げられます。
Z行よりも使用頻度が低いアローキーだとしても、やはり別の箇所で「マッスルメモリー問題」が発生してしまいます。
パターン2:右SHIFTと「↑」をFnで兼用する
次に考案されたのは、「右シフト」と「上矢印キー」を同居させるレイアウトです。
これは、Keychron K2 HEなどで採用されています。

これは、矢印キーの操作を裏レイヤーにして、Fnと同時押しで右シフトキーを押すと「↑」が入力される形ですね。
もしくは、Mod-Tapを設定すれば、長押し時に右シフトとして機能し、短押し時に「↑」として機能するでしょう。
ただし、これも便利さとのトレードオフとなっており、上矢印キーを押すにはFnと一緒に押さないといけない手間がかかります。
パターン3:↑キーを右へちょっとずらす
そして、2026年6月11日に発売された機種では、これらすべての葛藤を解決する「現状の最適解」を持った75%日本語配列キーボードが登場しました。
それが「Keychron J9」「Keychron K3 HE/Ultra」です。


このレイアウトでは、上矢印キーの右方向へのズレと、右端のキーをなくすことを許容することで、「ろ」「右シフト」「↑」をすべて共存させることに成功しています。
Kawamura上矢印キーの右隣にキーがないことについては、タッチタイピングでのミスタッチを減らす効果もありそうですね。
ただし、やはり「上矢印キーの0.25u分のズレ」に関しては、収まりが悪いと感じる方もいるでしょう。
ただし、実用面だけみれば、英語配列キーボードの外径を前提に日本語配列を作る場合、現時点ではこの形がかなり現実的な最適解に近いように感じます。
一方で、外径の制約がなければ、Keychron Q1のようなレイアウトが恐らくは理想的と言えそうです。

X連動アンケート企画も実施中
このKeychronが実践している「Z行をずらさない」パターンのどれが「違和感なく使えそうか」アンケートを実施中です。
実際に日本語配列を使っている方が、どのトレードオフを許容できるのか。今後の日本語配列設計を考えるうえでも興味深いテーマだと感じています。
まとめ:日本語配列75%キーボードに「完全な正解」はない
以上、日本語配列75%のZ行のズレについてお伝えしてきました。
Nick氏とお話をしてからしばらく経ちましたが、J9とK3 HEリリースのタイミングに合わせて書いてみたコラムです。
個人的には、Keychron J9、K3 HE、K3 Ultraで採用されたレイアウトは、Z行を維持しながら、右Shiftと逆T字アローキーを共存させる現実的な解答のひとつだと考えています。
一方で、やはり「↑」がちょっと右にずれてしまう違和感に関しては、見た目上すっきりしないと捉える方も中にはいらっしゃるでしょう。
本来であれば、75%日本語配列キーボードの横幅が16.5u-17uくらいあれば、こういった問題は起きないのですが、英語配列ベースの外径となっている関係上、なかなか難しいですね。
Kawamura日本語配列オンリーでの展開を考えているメーカーさんであれば、横幅16.5uサイズにするとこの問題は解決しますのでぜひ。
正直なところ、この問題に唯一の正解はないのだと思います。
だからこそ、各メーカーのレイアウトには、そのブランドが何を優先したのかが表れます。
今後、日本語配列メカニカルキーボードがさらに増えていくなかで、こうした細かなレイアウトの違いにも注目していきたいところですね。
ちょっとマニアックですけども。
- 初版執筆日:2026年6月12日
- 最終更新日:2026年6月12日
- 取材方法:筆者所感
- 参照・引用元:https://superkopek.jp/collections/keyboard
- 利益相反:商品提供:なし 本稿収益化リンク:あり
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