HHKBは、PFU株式会社が販売する60%レイアウトを採用したキーボードです。
ホームポジションを中心とした効率的な操作を追求してきたキーボードであり、英語配列モデルに関しては幅広いユーザー層にファンを持ちます。
今年で30周年を迎えるHHKBは、押下圧を30gfに設定した「30周年記念モデル」のリリースをはじめ、様々なパートナーとのコラボレーションを発表するなど盛り上がりを見せています。

一方で、昨今のキーボードジャンルを賑わせているのが「スモールキーボード」という考え方です。
以前から自作キーボードジャンルでよく聞いていたこの考えは、Keychron Orca echoの発表により瞬く間にキーボードシーンに広まりつつあります。
スモールキーボードは、レイヤー思想に基づいており、HHKBよりもさらにキー数が少ない中でホームポジションの維持を重視し、レイヤーキーを用いることで可能な限り指を動かさないタイピング体験を実現します。
この考えは、HHKBにもかなり近いものがあると、筆者は考えています。
そこで今回は、こんなキーボードを考えてみました。
もし、40%サイズの「HHKB mini」があったなら。
HHKBが持つ「ホームポジションから手を動かさない」という考え方をベースに、現代のスモールキーボードの設計思想を組み合わせてみます。
今回は、思考実験的なコラムです。
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HHKBが大切にしてきた「ホームポジションから動かない」という考え方
HHKBの独特なキー配列には、明確な理由があります。
PFUではHHKBについて、「プログラマーが理想とするキー配列のキーボード」をルーツとしており、ミニマルなキーを合理的に配置することで、ホームポジションから手を移動させる必要を減らしていると説明しています。(参考:HHKB)
たとえば、通常のキーボードではCaps Lockが置かれることの多い「A」の左にはControlキーがあります。

PFUのHHKB哲学を紹介する記事でも、この配置について、ホームポジションを崩さずにショートカットやコマンド操作を行うためと説明されています。
さらにFnキーとの組み合わせによって、物理的なキー数を抑えながら多くの入力を実現しています。
つまりHHKBは、単純に「小さいキーボード」というわけではなく、必要な機能を保持したままホームポジションからアクセスできるようにしたキーボードだと言えるでしょう。
ホームポジションをキープする、という部分を強調する
ここからはGreenkeysによる思考実験です。
HHKBの現在の配列は、60%クラスのキーボードとして完成しています。
一方、近年の40%キーボードでは、それよりさらにキー数を減らし、下記のような機能を実装することでより「効率的」かつ「コンパクト」に進化してきました。
40%キーボードに見える思想
- レイヤー
- Mod-Tap
- Layer-Tap
- 親指キー
- 左右対称に近いレイアウト
この「スモールキーボード」の考え方をHHKBへ持ち込んだらどうなるでしょうか。
そこで考えたのが、この「HHKB mini」です。

HHKB miniで考えた3つのこと


編集部がHHKB miniを考えるときに重要視したポイントは下記の3点です。
HHKB miniのコンセプト
- ホームポジションからさらに手を動かさない
- 左右の担当キー数を均等化する
- 親指の使用頻度を上げる
ホームポジションからさらに手を動かさない

HHKB miniで最も重視したのは、ホームポジションからできるだけ手を動かさないことです。
これは、元々のHHKBが持っている思想をさらに強調したものとなっています。
HHKBは、60%レイアウトとFnキーとの組み合わせによって、物理キー数を抑えながら、ホームポジション周辺から多くの機能へアクセスできるよう設計されています。
一方で、数字行やバックスペースキーなどへリーチするときは、どうしてもホームポジションから手が離れてしまいます。
HHKB miniでは、可能な限りホームポジションをキープするために、数字行を廃しました。
数字行は、レイヤーキーを押しながら操作する思想です。
考案したキーマップを見る

つまり、「遠くのキーを押しに行く」のではなく、「今いる場所のキーの意味を切り替える」というアプローチで、ホームポジションのキープを提案しています。
これは、40%キーボードでよく見られる発想でもあります。
左右の担当キー数を均等化する

今回のレイアウトでは、両手の担当キー数が均等になるように左右対称のデザインとしました。
一般的なキーボードは、ホームポジションを境に「右側にキー数が多い」構成になっています。
これはHHKBも例外ではありません。

その結果、右手はホームポジションから外側へ動く機会が多くなり、右手小指や右手全体の移動量が増えやすい構成だと考えられます。。
そこでHHKB miniでは、アルファキー部分を中心として、できるだけ左右対称に近い形になるようレイアウトしました。

キーの形状を見ると完全な左右対称ではありません。
あくまでも「左手と右手が、それぞれ同じくらいの範囲を担当する」ことを念頭に置いています。
親指の使用頻度を上げる
そして、HHKB miniのもうひとつの特徴がボトムローです。

スペースバーは3つに分割し、それぞれ2.25u / 1.75u / 2.25uサイズとしています。
通常のキーボードでは、左右の親指の主な仕事はスペースキーを押すことです。
しかし、親指は本来かなり自由に動かせる指です。
そこで、ユーザーが任意に下記のような頻繁に使用するキーを親指へ割り当てることで、新しいタイピング体験を創造することを提案します。
- Space
- Layer
- Backspace
- Shift
- Enter
提案しているキーマップでは、親指キーに二つの意味を持たせる「Mod-Tap」を前提として、下記のような使用方法を考えています。

左親指:Space / Layer 1
中央:Shift
右親指:Backspace / Layer 2
HHKBでは、右手小指のFnキーを用いて複数機能を裏レイヤーで実現していました。
HHKB miniでは、二つの親指キーを用いて、裏レイヤーにあるキーを押すことを前提としています。
HHKB miniのデメリット
HHKB miniのデメリットは「学習コストが高い」ということと「カスタマイズの幅が広すぎる」という二点を想定しています。
これはHHKB miniのデメリットというよりも、スモールキーボードがもつデメリットと同義です。
学習コストが高く、一般的なキーボードや通常のHHKBから乗り換える際のスイッチングコストも大きくなります。
キー数が少ないキーボードは、レイヤーキーを押して、「目に見えない裏レイヤーを想像しながら」タイピングを行います。
つまり、自身が設定した「裏レイヤー」を覚えておく必要があるのです。
これは明確に学習コストが高いと言えます。
Kawamuraconductorなどは、この学習コストに対して、自身が設定したキーマップと押しているキーを連動させて、ビジュアル上で表示する支援システムを実装しています。
もう一点は「カスタマイズの幅が広すぎる」という点です。
おそらく、キーマップは個人によって使いやすさがことなるため、気に入らないキーの位置を自分で変えることになるでしょう。
試行錯誤の過程を楽しむことができる方であればかなり「沼」に入るポイントにはなりますが、検討過程が面倒と感じる人もいることが予想されます。
HHKB miniは、“小さくしたHHKB”ではない
HHKB Miniの目的は、HHKBを小さくすることではありません。
40%キーボードには、前述したような明確なデメリットがあり、現在のHHKBが持つ「箱から出して比較的すぐ使える」という完成度とはまったく別方向の製品になります。
だからこそ、HHKB Miniは現在のHHKBを置き換えるものではありません。
イメージとしては、下記のような位置付けです。
- HHKB Professional|HHKBの王道。ホームポジションをキープしたまま入力するという思想のベース
- HHKB Studio|HHKBの思想を踏襲しつつポインティング操作まで統合
- HHKB Mini|HHKBの思想を踏襲しつつタイピング領域そのものを極限まで縮小
つまり、HHKB miniは、HHKB思想の延長線上にあります。
タイピング体験に価値を見出すユーザー
正直なところ、スモールキーボードがこれほど話題になるとは思ってもいませんでした。
理由は明白。
それは「明らかにスイッチングコストが大きい」からです。
キーボードは「それまでは」仕事の道具でした。
タイピングスピードは仕事の速さに直結するため、より効率よく目に見えるキーを素早く打てることが価値の一つでした。
2026年に入り、生成AIのさらなる進歩は「バイブコーディング」を主軸とするようになってきています。
生成AIを使う開発現場では、従来よりもコードそのものを手入力する時間が減る場面も増えてきました。
言葉で生成AIに指示を出してコードを生成してもらう機会が増加してきたことで、「キーボード不要論」まで出てきているような時代です。
だからこそ、キーボード自身が「効率よくタイピングする」という役割から解放されつつある、と私は考えます。
Kawamuraこれに関しては、「30%キーボードの世界を覗く」というコラムでも紹介しています。
また、スモールキーボード「DRESSTHING」設計者であるそうすけ氏は、この変化を「キーボードはファッションになれる」と表現しました。
このように、キーボードはバイブコーディング時代においてそれまでの役割から解放されつつあります。
そんな時代背景が、スモールキーボードという存在を際立たせているのかもしれません。
ユーザー自身もその時代の変化を感じ、「新しいタイピング体験」を求めた結果、スモールキーボードというニッチな存在が表舞台に浮き上がっているのだと感じます。
もし「HHKB Mini」が発売されたら、使ってみたい?
もちろん、今回紹介したHHKB Miniは架空の製品です。
Kawamura完全に筆者の妄想です。
PFUさん、勝手に考えてしまってすみません。
PFUが開発している製品でもなければ、発売予定があるわけでもありません。
ただ、「ホームポジションから手を動かさない」というHHKBの考え方と、「小さな範囲へ必要な入力を集約する」という40%キーボードの考え方は意外と相性が良いのではないかと感じています。
そこで、ぜひ皆さんの意見も聞かせてください。
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まとめ

以上、HHKB miniの想像設計について紹介してきました。
30周年を迎えたHHKBという製品。
そのキーレイアウトは海外のカスタムキーボードにまでも採用されており、WK・WKLと並んで「HHKB」が用意されるほどです。
最近ではChosfoxが新製品のキーレイアウトにHHKBレイアウトを採用するか、アンケートを取っていました。
あくまでもこの「HHKB mini」の考えは、一HHKBファンとしての妄想にすぎません。
しかし、31年目を迎えるPFUの新しいキーボードとしては、個人的には時代を反映していて面白いのではないかと感じています。
もし「HHKB Mini」があったなら。
皆さんは、使ってみたいでしょうか。
- 初回公開日:
- 最終更新日:
- 取材方法:メーカー公式サイト
- 参照・引用元:
- 記事内に記載(HHKB Lifeなど)
- 利益相反:商品提供:なし 本稿収益化リンク:なし
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